2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23700397
|
Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水口 留美子 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (70450418)
|
Keywords | 細胞認識分子 / 自閉症スペクトラム症候群 / BIG-2 (contactin-4) / 視床下部室傍核 / ストレス応答 |
Research Abstract |
細胞認識分子BIG-2(Contactin-4)は、脳内の特定の領域の神経細胞で発現しその軸索投射を制御すると考えられている。BIG-2遺伝子欠損マウスはオープンフィールドテストや高架式十字迷路において不安行動の上昇を示すことから、BIG-2はストレス応答や情動に関わる神経回路の形成に関与するのではないかと考えられた。本研究では、BIG-2遺伝子欠損マウスで異常が生じている神経回路を特定するために、オープンフィールドテストに伴って活性化する脳内部位を、抗リン酸化NFkB抗体を用いた免疫組織化学によりマッピングした。その結果、BIG-2遺伝子欠損マウスでは野生型マウスに比べて視床下部室傍核(PVH)の小細胞領域での神経活性が亢進していることが明らかとなった。PVHはストレス応答に中心的な役割を果たすことから、BIG-2遺伝子欠損マウスはPVHを含む神経回路に異常が生じることにより、新奇環境下でのストレスに対して過剰に反応しているのではないかと考えられた。BIG-2はPVHの小細胞領域で発現することから、細胞自立的に小細胞の軸索投射を制御している可能性が考えられた。そこで、小細胞領域に存在するCRF(副腎皮質刺激ホルモン放出因子)陽性ニューロンの軸索投射のパターンを調べたが、野生型マウスとBIG-2遺伝子欠損マウスの間で目立った違いは見いだせなかった。このことから、BIG-2はPVHのCRF陽性ニューロンの発生や軸索投射には必須ではないと考えられた。BIG-2遺伝子欠損マウスでは、PVHの活性を制御する他の出力ニューロンや介在ニューロンの投射に異常が生じ、その結果としてPVHの神経活性が亢進している可能性が示唆された。本研究で得られた成果は、情動やストレス応答を制御する神経回路形成の分子機構を解明する上で手がかりとなることが期待される。
|