2011 Fiscal Year Research-status Report
精神疾患リスク遺伝子のオリゴデンドロサイトにおける機能解析
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23700415
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
服部 剛志 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (50457024)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 統合失調症 / グリア細胞 / オリゴデンドロサイト / 脳神経発達 |
Research Abstract |
精神疾患リスク因子であるDISC1がオリゴデンドロサイトでどのような働きを持っているかを検討するために、オリゴデンドロサイトの培養系を用いて、DISC1の分化への影響、また、その分子メカニズムの検討を行った。現在までに得られた結果は、1.DISC1が生体、培養系のオリゴデンドロサイトで強い発現が見られた。2.DISC1はオリゴデンドロサイトの前駆細胞で特に強い発現が認められた。3.DISC1はオリゴデンドロサイトの細胞質や突起に強く発現しており、核の一部にも発現が認められた。4.DISC1はオリゴデンドロサイトの分化を負に制御していた。5.DISC1がオリゴデンドロサイトの分化を制御する過程に、転写因子であるsox10、nkxが関与していた。以上の結果より、DISC1は神経細胞だけでなくグリア細胞にも強く発現し、脳神経発達過程のオリゴデンドロサイトの発生に関与していることが明らかになった。これまでに、精神疾患の発症には神経細胞の発達異常だけでなく、グリア細胞の異常が認められることが、患者死後脳の研究などから報告されている。今回の本研究でも精神疾患リスク因子のDISC1がオリゴデンドロサイトの分化を制御している結果が得られたことより、オリゴデンドロサイトの発達異常が精神疾患発症のリスクを高めている可能性を示唆できた。今後、オリゴデンドロサイトの発達異常が疾患発症にどのような機序で関与しているのか、どのような症状と関与しているのかを明らかにしていけば、新たな診断・治療法の確立に役立つ可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はオリゴデンドロサイトの培養系を用いて、精神疾患リスク因子であるDISC1がオリゴデンドロサイトの分化・増殖・遊走能に影響があるかどうかを検討し、その分子メカニズムを解明することを目的としていた。平成23年度に我々は、DISC1のオリゴデンドロサイトでの発現を培養また生体で詳細に確認した。そして、DISC1がオリゴデンドロサイトの分化を制御していることを培養系で明らかにし、さらにその現象に関与する因子も同定することができた。しかしながら、増殖・遊走に対するDISC1の関与はまだ確定できていないので平成24年度も引き続き実験を行う予定であるが、以上の成果より平成23年度の目的はほぼ達成したと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きオリゴデンドロサイトの培養系を用いて、DISC1が増殖・遊走に関与しているかどうかを確定させる。もし、DISC1が増殖や遊走に関与していれば、その現象に関与している因子群を平成23年度に行った方法と同様の方法で探索を行う。それらの実験の後、培養系で得られた結果にに基づき、DISC1遺伝子欠損マウスにおいて、オリゴデンドロサイトの増殖・分化・細胞移動に異常がないか検討を行う予定である。さらにDISC1遺伝子欠損マウスにおいてDISC1の下流で分化・増殖・遊走を制御する因子群に発現の変動がる可動化も検討を行う。これらの実験を行い、DISC1のオリゴデンドロサイトにおける新たな機能とその分子メカニズムを解明し、精神疾患発症の新たな機序解明につなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に予定していた実験はほぼ計画通り行うことができたので、研究費もほぼ予定通りの額を使用した。しかしながら、予定していた実験の一部(オリゴデンドロサイトの増殖・遊走に関する実験の一部)を完了できなかったため、次年度使用の研究費が19,633円生じた。次年度はオリゴデンドロサイトの培養系の実験とDISC1遺伝子欠損マウスを用いた実験を行うため、培養試薬、動物購入、動物飼育管理費、試薬類、各種抗体、ガラス器具、プラスチック器具などが必要であるので、1,469,633円を計上した。また、本研究で得られた成果を学会発表する経費として旅費が必要であるので、研究打合せ旅費と成果発表旅費として250,000円を計上した。
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Research Products
(5 results)