2011 Fiscal Year Research-status Report
ERストレス応答機構ERADによるRer1分解を介したAβ産生制御
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23700425
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
田邉 千晶 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (00552902)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / ERAD |
Research Abstract |
アルツハイマー病の原因であるアミロイドβ(Aβ)産生酵素であるγセクレターゼは、4つの構成因子から成り、ERにおけるnicastrin(NCT)とanterior pharynx defective 1(APH-1)の会合から始まり、これに活性中心であるpresenilin(PS)とPS enhancer 2(PEN-2)が結合することで複合体が形成される。この複合体は、PSの分子内切断を受け、さらにトランスゴルジへと輸送されNCTの糖鎖修飾による成熟化を経て活性型となる。 先行研究において、ERストレス応答機構である小胞体関連分解(ERAD)に関与するユビキチンリガーゼであるsynoviolin(Syn)が、未成熟型NCTの分解に関与していることを示したが、NCTが分解されているにもかかわらず、Aβ産生が増加する分子機構は明らかではない。我々は、ゴルジ体からERへの逆行輸送に関与し、NCTとAPH-1の結合阻害によりγセクレターゼ複合体形成を負に制御する、retrieval to ER 1 protein(Rer1)に着目し、SynがRer1のユビキチン化・分解を介してγセクレターゼ活性を制御しているかどうかを検討した。 まず、Syn欠失型と野生型のfibroblastを用いて、Rer1レベルを比較した結果、Syn欠失型細胞において、Rer1レベルの上昇がみられた。シクロへキシミドを用いて調べた結果、これはRer1の分解抑制によるものであった。また、Syn欠失細胞にSynを過剰発現すると、Syn活性依存的にRer1が分解されることを示した。さらに、免疫沈降の結果から、Rer1がSynと結合しユビキチン化されることを示した。これらの結果から、SynがRer1の分解を介してγセクレターゼ活性を制御している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画で予定していたことは、主に以下の2点である。(1) Synによって活性型γセクレターゼ複合体の形成促進がみられるか調べる。(2) Rer1がSynの基質としてユビキチン化修飾を受けることを示し、その修飾様式を調べる。 以上の点に関して、まず、(2)から先に検討を始めた。Syn欠損型fibroblastにSynを過剰発現し、プロテアソーム阻害剤あるいはオートファジー/リソソーム系阻害剤であるクロロキンで処理することによって、ユビキチン化Rer1レベルが増加することが示された。また、この増加はユビキチンリガーゼ活性依存的であり、ドミナントネガティブ変異体であるSynC307Aを過剰発現ではみられなかった。よって、Rer1の分解経路はプロテアソーム系とリソソーム系の両方であることが明らかとなった。また、そのユビキチンの修飾様式は、分子量から考えてモノユビキチン化とポリユビキチン化の両方であることが明らかとなった。(1)については現在条件検討中である。 また、以上の結果を論文にまとめ、現在投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、SynによるAβ産生活性の上昇が、γセクレターゼ複合体形成と相関しているかを調べる。前年度に引き続き、活性型γセクレターゼ複合体をLubrol WXを用いたショ糖密度勾配遠心によって分画し、Syn欠損型細胞と野生型細胞の間でγセクレターゼ複合体因子の細胞内局在を比較する。 さらに、Rer1がERストレス依存的に制御されているかを調べ、ERストレス条件下におけるRer1依存的なγセクレターゼ活性調節を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
γセクレターゼ複合体の形成への影響を調べる目的で、数種類の抗体、試薬の購入を検討している。また、5月に生化学会東北支部の学会参加、8月に日本病態プロテアーゼ学会発表、9月にProtease World in Health and Disease 1st International Symposium に本研究成果を発表する予定である。また、現在投稿中の論文掲載料に使用予定である。
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Research Products
(2 results)