2011 Fiscal Year Research-status Report
レット症候群病態におけるNFーkBシグナル関与の解析
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23700426
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岸 憲幸 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (30594882)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | レット症候群 / 自閉症 / MeCP2 / NF-kBシグナル / PCRアレイ |
Research Abstract |
申請者のこれまでの研究結果よりMeCP2の新規標的遺伝子としてNF-κBシグナルの構成因子の1つであるIrak1を同定し、NF-κBシグナルの異常亢進がMecp2欠失マウスの表現型に関与していることを明らかにした。本研究計画においてはPCRアレイを用いてMecp2欠失マウスにおけるNF-κBシグナル関連因子の発現解析を行い、どの下流因子がMecp2欠失マウスの表現型に関与しているか解析を行った。NF-κBシグナル関連遺伝子84個を網羅したSABiosciences社のPCRアレイを用いて、Mecp2ノックアウトマウス脳におけるNF-κBシグナル関連因子の発現変化の解析を行った。そこでまず、Mecp2ノックアウトマウスを得るために、Jackson LabよりMecp2ヘテロ雌マウスを6匹購入し、野生型の雄マウスと交配することにより繁殖コロニーを拡大させていった。平成23年度は生後14日目(個体レベルの表現型は検出されないが、遺伝子レベルでは異常が検出される時期)と8週齢(個体レベルでの表現型が顕著な時期)で野生型とMecp2ノックアウトcortexから各々3組ずつRNAの採取を行った。現在までに8週齢のwild-typeとMecp2ノックアウト(Mecp2 -/y)のlittermate3組について上記のPCRアレイ解析アレイを用いて比較解析を行った。その結果、IL6やTNFを含む多数の下流因子がMecp2ノックアウトcortexにおいて発現が上昇していることを明らかになり、MeCP2欠失により過剰発現したIrak1によるNF-kBシグナル異常亢進が、Mecp2ノックアウトマウスの病態に関与しているという仮説を裏付けることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はMecp2ノックアウトマウスの繁殖に多くの時間を割いた。Mecp2遺伝子はX染色体上にあり、ヘミ接合体(Mecp2 -/y)は性成熟する前に致死になるため繁殖用には使用できない。そこで我々は米国のJackson LabよりMecp2ヘテロマウスを6匹購入し、 Mecp2ヘテロ雌マウスと野生型雄マウスを交配することによりコロニーの拡大を図った。しかしながら、Mecp2の変異はドミナントに表現型を表す上、X染色体のランダムな不活化により表現型が軽いものから重いものまで様々な表現型を呈す。最終的に購入したMecp2ヘテロマウス6匹の内、2匹は一度も出産に至らなかった。また残り4匹についても出産した新生仔を母親が育児放棄、あるいは食殺してしまうことがしばしば見受けられ、コロニー拡大に予想以上の時間を費やした。しかしながら、何とかPCRアレイ解析を行うだけの必要個体数を確保し、8週齢に関しては既に解析を終えている。現在、もう一つの解析ポイントである生後14日目のサンプルも既に採取しており、PCRアレイ解析の準備中である。平成23年度の実験計画ではPCRアレイ解析まで行う予定になっており、ほぼ達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は平成23年度の成果を踏まえ、前年度行うことができなかった生後14日目(個体レベルの表現型は検出されないが、遺伝子レベルでは異常が検出される時期)のNF-kBシグナル関連遺伝子のPCRアレイ解析をまず最初に行う。生後14日目、8週目のPCRアレイの結果をもとに、Mecp2ノックアウト脳で特異的に発現が増加、あるいは減少している遺伝子についてその発現の増減を確認するため、特異的なプライマーを設計して再度PCRを行い、統計学的にその増減が有意であることを確かめる。MeCP2はIrak1の発現を抑制することによってNF-kBシグナルを抑制していると考えられているので、Mecp2ノックアウト脳において発現が上昇している遺伝子は表現型との関連が強く示唆されるので、それらの遺伝子については、以前申請者が確立した神経幹細胞の培養系を用いて更にレット症候群との関連を検討する。レット症候群の患者、モデルマウスにおいては、大脳新皮質の錐体ニューロンの樹状突起の進展が縮小されていることが知られている。マウス胎仔脳より採取した神経幹細胞を培養し、そこにこれらの遺伝子を強制発現し、培養下でニューロンに分化させ、野生型のニューロンと比較して樹状突起の伸展がどのように変化したかを解析することによって、レット症候群の病因との関連性について検討する。このin vitroでの解析の結果をもとに、更にin vivoエレクトロポレーション法を用いて、マウス胎仔脳に直接遺伝子を強制発現させてNF-kB関連遺伝子の神経発生過程における発現異常がin vivoにおいてもニューロンの発達の異常を引き起こすことを証明する。これらの実験結果を平成24年度中に得て、これらの成果を論文にまとめて発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は9575円の未使用額が発生したが、これは効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品購入に充てる予定である。すなわち、平成24年度は、実験用動物購入費として、200000円、生化学実験試薬購入費として309575円、生化学実験器具購入費として300000円、ソフトウェア購入費として100000円、研究打ち合わせあるいは研究成果発表のための国内旅費として100000円、研究成果発表あるいは情報収集のための国外旅費として400000円、英文校正などの謝金として100000円、通信費や印刷費などのために100000円、合計 1609575円を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)