2011 Fiscal Year Research-status Report
アミロイド前駆蛋白を介したトランスサイレチンの発現調節と網膜変性の関係
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23700427
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
藤ヶ崎 純子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60312021)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 脊髄小脳失調症 / 網膜変性 / 網膜色素上皮細胞 |
Research Abstract |
脊髄小脳失調症7型(SCA7)は網膜変性を合併する遺伝性神経変性疾患で、ataxin-7蛋白の変異を原因とする。SCA7における網膜変性の機序解析の為に、SCA7モデルマウスを用いた実験を行った。 SCA7ノックインマウス(Sca7266Q/5Q )および正常コントロール(C57BL/6J)の網膜の組織標本作製し、網膜を構成する各細胞でのSCA7の変性機序に関与する蛋白の細胞内動態を解析した。本研究では、網膜色素上皮細胞の機能に着目した解析を行うため、色素上皮細胞の観察を容易にするための染色法を検討した。色素上皮細胞は細胞質内に大量に存在するメラニン色素により、細胞内を顕微鏡的に観察することが困難なため、ギムザ変法によってメラニン色素の色調をメタクロマジーにより変化させた。同法により免疫組織学的観察が容易になり、SCA7モデルマウスの色素上皮細胞内での、1)変異ataxin-7蛋白の凝集、2)アルツハイマー前駆ファミリー蛋白APP/APLPの発現の変化、3)オートファジーの変化が確認された。SCA7では網膜の視細胞を含む神経細胞での変異ataxin-7の凝集や、細胞機能の障害は確認されているが、色素上皮細胞に同様の変化が生じているとの報告はない。色素上皮細胞は視細胞の機能を維持する為に重要な機能を果たしている。SCA7の網膜変性課程には、視細胞そのものの機能障害のみならず、神経の支持細胞である色素上皮細胞の障害が関与している可能性を示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験に用いるSCA7ノックインマウス(Sca7266Q/5Q )の発育が極めて悪く、コロニーの維持が非常に困難であった。そのため、充分なサンプルを採取することが出来なかった。また、疾患コントロールマウス(アルツハイマー病モデルマウス:C57BL/6-Tg(Thy1-APPSwDutIowa)BWevn/J)の入手に際し、業者間の権利譲渡時期の輸入制限により、入手時期が遅延した。得られたサンプルは限られたいたが、これらを組織学的な検索に用い、計画に従った検討を行うことができた。しかしながら、上記の理由によって実験サンプルの確保が十分にできなかったことにより、当初の予定より実験は遅滞している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、SCA7ノックインマウス(Sca7266Q/5Q )のコロニーが維持できていない為、再度コロニーの樹立を行うが、当初の見込みより該当マウスの発育不良が著しいため、使用するモデルマウスの変更あるいは培養細胞系の導入も検討する。 使用するSCA7モデルマウスを検討後、該当するモデルマウスでの色素上皮細胞の機能解析を継続する。研究計画では、SCA7ノックインマウス(Sca7266Q/5Q )と色素上皮細胞の機能に関与するトランスサイレチン変異マウスとの二重変異マウスの作製を計画していたが、マウスの発育困難により二重変異マウスを得られない可能性がある。代替として、網膜組織にトランスサイレチンの過剰発現、ならびに発現抑制を誘導するために、発現ベクター、siRNAを眼球内に投与するあるいは、色素上皮細胞株(ARPE-19)を用いた細胞培養系の導入も検討する。以上の実験対象を用いて、SCA7および正常コントロール、疾患コントロールでの色素上皮細胞の機能障害を評価し、SCA7の網膜変性機序に、神経支持細胞である色素上皮細胞の機能変化が関与している可能性を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験に用いる予定であったSCA7ノックインマウスの発育不良により、充分なサンプルを得ることができず、サンプル数が予定より減少した為に残高が生じた。次年度の研究費は以下の計画に沿って使用する。・初年度に得られたSCA7ノックインマウス(Sca7266Q/5Q )、疾患コントロールマウス(アルツハイマー病モデルマウス:C57BL/6-Tg(Thy1-APPSwDutIowa)BWevn/J)、正常コントロール(C57BL/6J)の網膜組織の組織学的検索を継続する。・SCA7ノックインマウス(Sca7266Q/5Q )のコロニーの再樹立を行い、平行して別のSCA7モデルマウスを導入を検討する。順調にSCA7モデルマウスが得られた場合はSCA7モデルマウスとトランスサイレチン(TTR)変異マウスとの二重変異マウスの作製を行う。・必要があれば、TTR発現ベクター、TTR siRNAを作製し、ヒト色素上皮細胞株(ARPE-19)を用いた細胞培養系を導入する。・以上の実験対象の網膜色素上皮細胞において、変性に関与すると考えられる分子標的の細胞内動態について、組織学的検討、生化学的検討を行う。
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