2013 Fiscal Year Research-status Report
アミロイド前駆蛋白を介したトランスサイレチンの発現調節と網膜変性の関係
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23700427
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
藤ヶ崎 純子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60312021)
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Keywords | 脊髄小脳失調症 / 網膜変性 / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
脊髄小脳失調症7型(SCA7)は網膜変性を合併する遺伝性神経変性疾患で、ataxin-7蛋白の変異を原因とする。SCA7における網膜変性の機序解析の為に、SCA7モデルマウスの網膜組織を用いて実験を行った。前年度までの成果に基づき、SCA7、アルツハイマー病モデルマウスの網膜組織におけるアミロイド前駆ファミリー蛋白APP/APLPの発現変動、核内ドメインの変動について解析を継続した。アミロイド前駆ファミリー蛋白APP/APLPについては、アルツハイマー病モデルマウスの視細胞で、APLP2の凝集が生じていたが、これらは正常対照、SCA7では観察されなかった。核内ドメインの変化については、正常対照マウスの網膜では、RNA代謝を調節する核内ドメインであるspliceosome, Cajal小体は視細胞の細胞核では同定され難かった。一方、SCA7マウスでは、視細胞の内節側の細胞核ではspliceosomeが明瞭に観察されたが、抗coilin陽性の構造物の変化は認められなかった。使用したSCA7モデルマウスの網膜では、視細胞層が高度に萎縮し、核の層状配列に乱れが生じる。視細胞の核内ドメインの変化が視細胞の核の層によって異なっていたことから、SCA7の視細胞では核配列を制御する機構に変動が生じている可能性を考え、核配列を制御する核蛋白SUN-1の分布を検討した。結果、SCA7の視細胞ではSUN-1の凝集が生じていることが確認された。このような変化は正常対照マウス、アルツハイマー病モデルマウスの網膜組織では観察されなかった。SCA7の網膜では、RNA代謝の変動を示唆するspliceosomeの構造の変化、核配列の制御に異常が生じ、網膜変性に関与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の計画に従って、SCA7、アルツハイマー病モデルマウスの網膜組織におけるアミロイド前駆ファミリー蛋白の関与に関する検索を行った。また、ataxin-7の結合蛋白として同定したcoilinが関与する核内ドメインの網膜組織における変動を解析し、SCA7の網膜変性との関係を評価した。加えて、SCA7では視機能の維持に重要な視細胞の核配列の制御に異常が生じていることを新たに見いだし、研究は概ね計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに、正常対照、SCA7、アルツハイマー病モデルマウス、それぞれの網膜組織におけるアミロイド前駆ファミリー蛋白APP/APLPの発現変動を解析し、アルツハイマー病モデルマウスにおいて、これまでに報告のない現象を見いだした。また、SCA7の網膜変性に関わる因子として視細胞での核内ドメインの変動と、核配列の制御の異常を見いだした。最終年度となる本年度は、SCA7の視細胞で認められた核内ドメインの変動と、核配列の制御の異常がどのように関連しているかを更に解析し、神経変性疾患に合併する網膜変性のメカニズムに関し、本研究によって得られた成果を総括する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の初年度から2年度にかけて、当初の計画ではSCA7ノックインマウスとトランスサイレチン(TTR)変異マウスの二重変異マウスを作製する予定であった。SCA7ノックインマウス(Sca7 266Q/5Q)の発育不良の問題が解決せず、二重変異マウスの作製は断念する方針となったため、研究の遅滞が生じた。その後の研究は変更した計画に従って遂行したが、当初に生じた研究変更の影響により、使用予定であった研究費が次年度に持ち越された。 これまでの研究期間に解析した脊髄小脳失調症7型およびアルツハイマー病モデルマウスの網膜組織を用い、網膜組織におけるアミロイド前駆蛋白、核内ドメイン蛋白、核配列決定に関与する蛋白が網膜変性に関与する病態を組織学的に検討する。未使用の研究費は動物の飼育費、組織学的検索、研究成果の総括と論文作成にかかる費用に用いる。
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