2012 Fiscal Year Annual Research Report
選択的オートファジー経路は、過剰リン酸化タウへの神経細胞の応答を決定づけるのか?
Project/Area Number |
23700431
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
小野 麻衣子 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (70595876)
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Keywords | タウ / p62 / 選択的オートファジー / 神経細胞死 / 神経原線維変化 / アルツハイマー病 |
Research Abstract |
異常なタウ蓄積下で神経細胞が神経原線維変化を形成するか、神経細胞死を起こすかを左右する機構は明らかではない。本研究では、ヒトタウ突然変異導入マウスを用いて、選択的オートファジーによるタンパク質分解機構と、そこにユビキチン化基質を誘導する因子であるp62が、異常なタウ蓄積下で神経細胞が発現するタウ病理の決定に関与するかを検討した。 前年度までに、選択的オートファジーによるp62基質のベースレベルでの分解頻度の差が、異常なタウ蓄積下で神経細胞が発現するタウ病理の決定に関与する可能性を明らかにした。最終年度では、この分解頻度の差はユビキチン化基質のベースレベルでの蓄積量の差より生じる可能性を明らかにし、さらに、p62はこれらの基質を構成成分とする封入体の形成に必須であることを明らかにした。一方で、p62は神経原線維変化の形成に必須ではないことが判明したが、神経細胞体へのリン酸化タウの封入に関与し、神経原線維変化形成を促進する可能性が示された。p62はリン酸化タウの蓄積を阻害することが前年度までに明らかになっていたが、最終年度の研究により、リン酸化タウ分子種の中でも細胞毒性を発揮すると考えられている可溶性で低密度のリン酸化タウ分子種の蓄積を阻害することが明らかになった。 本研究により、p62は細胞毒性を持つ異常なタウの分解を促進し、また、それらを神経細胞体に封入し、神経原線維変化形成を促進することで、タウの毒性から神経細胞を保護することが示された。さらに、異常なタウを処理するp62のキャパシティー低下が、異常なタウ蓄積下で神経細胞死を誘引することが示唆された。アルツハイマー病をはじめとする多くの神経変性疾患における認知障害の主因は神経脱落であり、本研究により、p62を含む選択的オートファジー経路の活性化が、タウが引き起こす神経細胞死に対して予防効果を発揮する可能性を明らかにした。
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Research Products
(3 results)