2013 Fiscal Year Annual Research Report
細胞質型チロシンホスファターゼSHP2による脳機能制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
23700438
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
草苅 伸也 群馬大学, 生体調節研究所, 研究員 (10510901)
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Keywords | 蛋白質チロシンリン酸化 / チロシン脱リン酸化酵素 / 高次脳機能 |
Research Abstract |
本研究では、細胞質型チロシンホスファターゼSHP2による脳機能制御メカニズムの解明に取り組んでいる。研究代表者は、これまでの解析により、SHP2の成熟前脳神経細胞特異的な遺伝子破壊マウス(SHP2 cKO)が強い多動を示すことを見出し、さらに培養細胞を用いた解析から、SHP2が神経栄養因子BDNFシグナルの下流において、Ras/MAPKのポジティブレギュレーターとして機能することを明らかにしている。BDNFシグナルの機能破綻は多動の原因となることがこれまで複数の研究グループより報告されていることから、SHP2 cKOマウスにおける多動の原因のひとつとしてBDNFシグナルの破綻が関与する可能性が示唆される。一方、BDNFシグナルは記憶・学習の制御と深く関わることが報告されており、SHP2がBDNFシグナルの下流で記憶・学習の制御に関与する可能性が考えられた。そこで、記憶・学習について検討したところ、SHP2 cKOマウスが海馬依存的な空間学習実験のひとつであるモーリス水迷路テストにおいて、学習成績の低下を示すことが明らかとなった。さらに、文脈記憶実験のひとつである恐怖条件付けテストにおいても、SHP2 cKOマウスが海馬依存的な記憶に異常を示すことが明らかとなり、SHP2が海馬依存的な記憶・学習の制御に関与する可能性が示唆された。記憶は獲得、固定、呼び出し、再固定などのプロセスによって形成されると考えられていることから、今後は、SHP2が記憶形成のどのプロセスに重要か詳細に検討するとともに、その分子メカニズムの解析を進め、成熟脳におけるチロシンホスファターゼSHP2の新たな機能とその制御メカニズムの解明を目指す。
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Research Products
(6 results)