2011 Fiscal Year Research-status Report
C. elegansを用いた新規アミンシグナル調節因子の同定
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23700439
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
周防 諭 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (20596845)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ドーパミン / オクトパミン / C. elegans / 受容体 / 遺伝学 / ニューロペプチド |
Research Abstract |
本研究は、線虫C. elegansを用いてドーパミンやオクトパミンなどのアミン神経伝達物質のシグナル伝達を調節する因子を同定することを目的としている。まず、スクリーニングによってアミン神経伝達物質によって制御されているCREBが恒常的に活性化している変異体を単離した。さらに、その過程で、アミンシグナルによってCREBが制御されている神経細胞とは別の感覚神経細胞にてCREBが恒常的に活性化される変異体も一株単離した。同じような感覚神経において熱刺激によってCREBが活性化することから、熱刺激応答に関与する因子の発見につながる可能性があり興味深い。また、これまでの我々の予備的実験により、ニューロペプチドのプロセッシングに関わるカルボペプチダーゼEをコードするegl-21遺伝子の変異体でもCREBの活性化が起こることを見出していた。今回、egl-21変異体についてより詳細な解析を行ったところ、egl-21遺伝子はドーパミンとは独立したメカニズムによって、餌依存的にオクトパミンシグナルを抑制していることが明らかとなった。さらに、egl-21と同じようにニューロペプチドのプロセッシングに重要なegl-3遺伝子の変異体についても同じ表現型が見られたことから、ニューロペプチドがアミンシグナルの制御を行っていることが明らかとなった。 以上に加えて、ser-6遺伝子がオクトパミンシグナルに関与していることを明らかにした。これまでに、オクトパミンによるCREBの活性化には受容体であるSER-3が必要であることがわかっていたが、SER-3と相同性の高いSER-6受容体も必要であり、かつ両者とも同じ細胞で働いていることが今回明らかとなった。同じような受容体が2つとも存在しなければシグナル伝達が行われないのは興味深く、このメカニズムの解析は有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回明らかとなったSER-3とSER-6の関係は、普遍的に存在する機能の重複した受容体の存在意義を理解するうえで興味深く、アミンシグナルには特にこのような受容体が多数存在することから、本研究の目的であるアミンシグナル制御の理解に貢献するものである。また、予定していた単離した変異体についてのマッピングはまだ完了していないが、egl-21の解析については計画していたより早く着手し、順調に進んでいる。以上を総合的に判断すると、研究全体として順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
単離された変異体については、感覚神経でCREBが活性化している株も含めマッピングを継続して行う。SNPマッピングに通常用いられるCB4856株自体にCREB活性化を制御する遺伝子変異がある可能性もあるので、マッピングが容易なものを重点的に行う。egl-21の解析について、今後は働いているニューロペプチドの同定とそのニューロペプチドが働いている細胞の同定を行う。SER-3/6に関しては、オクトパミンシグナル伝達において2つの受容体が両方とも必要であるメカニズムを解析していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
より感度の高い観察を行うために、23年度に24年度使用予定だった研究費の一部を前倒しし蛍光顕微鏡を購入した。これにともない24年度購入予定だった大型インキュベーターの購入を取りやめることになる。しかし、既に前倒しの申請書で説明してある通り、これまでに小型のインキュベーターが導入され、さらにそれに収まらない分については別の研究に用いられているインキュベーターの一部が使えることになったので、研究遂行上問題はない。その他の経費に関しては変更なく、申請時の通りに消耗品、旅費などに使用していく。次年度使用額2712円については、無理に0にしようとしなかったから生じたが、少額で23年度の研究遂行に影響を与えていない。24年度に消耗品購入に使用する予定である。
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