2011 Fiscal Year Research-status Report
覚せい剤依存症におけるカルシウム動態とアクチン骨格の相互作用に関する研究
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23700453
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
芝崎 真裕 星薬科大学, 薬学部, 助教 (80412162)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 覚せい剤 / 神経可塑性 / カルシウム動態 / アクチン骨格 / シナプス形成 |
Research Abstract |
研究実施計画に基づき、methamphetamine誘発精神依存獲得動物の側坐核サンプルを用いて、カルシウム結合蛋白質の変化について検討した。その結果、PKC,CaMKIIおよびCaMKIV蛋白質量の有意な増加が認められた。また、actin重合に関与するN-WASP,WAVE,Cdc42 mRNA発現量に有意な変化は認められなかったが、脱重合に関与するADFおよびcofilinはmethamphetamine誘発精神依存獲得動物の側坐核において、有意な増加が認められた。これらの結果から、methamphetamine誘発精神依存に、カルシウム結合蛋白質およびactin network制御因子が関与する可能性が示唆された。そこで、組織学的免疫染色法を用いてADFの側坐核での局在について検討したところ、dopamine神経のpre側およびpost側に局在が認められた。したがって、ADFはdopamine神経系においてactinの重合・脱重合機構に関与すると推察される。次に、アセチル化ヒストンH3およびH4の変化について検討したところ、methamphetamine誘発精神依存獲得動物の側坐核においてアセチル化ヒストンH3の有意な増加が認められた。そこでクロマチン免疫沈降法を用いて、各種骨格調節に関連する遺伝子のプロモーター領域でのアセチル化の変化について検討した。その結果、methamphetamine誘発精神依存獲得動物の側坐核において、細胞骨格形成に重要なneurexin,SVP-38,PSD95および神経可塑性に重要なGluR1,NR2A,NR2Bの有意な増加が認められた。以上の結果より、覚せい剤による精神依存形成に細胞内カルシウム動態とアクチン骨格ダイナミクスが重要な役割を果たす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究目的は、細胞内カルシウム動態の変化を中心とした覚せい剤依存症における細胞内カルシウムシグナルの変化が及ぼすカルシウム結合蛋白質およびactin network制御因子の変化とそれらの相互作用について多角的な検討を行い、覚せい剤による細胞内カルシウム動態変化のデータを集めることであり、おおむね研究実施計画通りに遂行することが出来たと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は平成23年度に得られた結果を応用し、覚せい剤依存症における神経の可塑的変化、すなわち、スパイン形成異常をはじめ、樹状突起神経の伸展伸長異常やエピジェネティック変異等におけるactin重合・脱重合調節機構の関与について検討を行う。 覚せい剤依存症におけるactin turnoverの変化として、G-actinおよびF-actin量の測定を行い、actin turnoverの変化について明らかにする。さらにシナプスのマーカーであるSVP-38やPSD95、neurexin、neuroligin等を用いて、免疫染色法によりシナプス形成の変化について検討する。VDCC α1cサブユニット半欠損マウスと比較することにより、細胞内カルシウム動態との関連性についても解析する。また、methamphetamineの精神依存形成に対するactin重合阻害剤cytochalasin Dやactin脱重合阻害剤phalloidinの効果、さらにはADF変異動物によるmethamphetamine精神依存形成能の相違について、条件づけ場所嗜好性試験法を用いて行動薬理学的に検討する。これらの検討に関わる基礎実験は終了しているため、次年度の研究目的も達成できると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画・方法で挙げた条件づけ場所嗜好性試験法に用いるtwo-compartment boxならびに関係するシステムや蛍光顕微鏡ならびに蛍光カルシウムイメージングに関わる設備は星薬科大学に設置されたものが使用可能であり、本研究申請者のみで操作可能である。免疫組織染色法や免疫沈降法、ウェスタンブロット法、RT-PCR法、real time RT-PCR法、受容体結合実験を行う設備も整っており、またこれらを行うに十分な手技も獲得している。研究計画・方法に記載したVDCC α1cサブユニット半欠損マウスならびにADF変異マウスは、既に所有・飼育しており購入の必要はない。したがって、平成24年度に使用する研究費は、これらの実験に使用する実験動物(マウス)、チップやチューブなどのプラスチック製品、試薬類や拮抗薬・阻害薬等の薬品、各種抗体、放射性同位元素等の消耗品に使用予定である。
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