2012 Fiscal Year Research-status Report
cAMP/cGMPによる微小管動態の拮抗制御とその機能的意義
Project/Area Number |
23700456
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
秋山 博紀 独立行政法人理化学研究所, 神経成長機構研究チーム, 基礎科学特別研究員 (40568854)
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Keywords | 軸索ガイダンス / 成長円錐 / cAMP / cGMP / 微小管 |
Research Abstract |
伸長中の軸索先端部に存在する成長円錐は,外環境中の誘引性あるいは反発性の軸索ガイダンス因子を認識し,軸索を定められた標的まで牽引する。成長円錐は,複数種の因子に同時に遭遇するため,それらの情報を統合し,進路を決定すると考えられる。多くの誘引性因子はcAMPの,反発性因子はcGMPの上昇を促すことから,これらのシグナルによって何らかの進路決定因子が拮抗的に制御される可能性が考えられる。そこで,本研究課題では,cAMPとcGMPによる微小管動態の拮抗的制御によって,成長円錐の進路が決定される可能性を検討する。 平成24年度は,ニワトリ胚由来脊髄後根神経節細胞を用いて,成長円錐における局所cAMP/cGMP上昇が進路転換を引き起こすメカニズムを探索した。ケージドcAMPおよびケージドcGMPを導入した成長円錐の片側に紫外レーザーを繰り返し照射することで,誘引および反発が引き起こされる(前年度報告済)。この誘引・反発がそれぞれPKAおよびPKGの薬理学的阻害剤により抑制された。膜小胞上に存在するVAMP7と微小管あるいは形質膜の動態を同時蛍光イメージングにより解析したところ,1)VAMP7が微小管上を先導端に向かって輸送されること,2)この輸送頻度が微小管の成長円錐周辺部への張り出し頻度と正の相関をもつこと,3)VAMP7の先導端への接触と接触部位の突出に正の相関があること,を発見した。VAMP7の機能を阻害するため,VAMP7の一部(Longin Domain: LD)を発現させたところ,微小管接触部位での先導端突出が抑えられた。さらに,LDにより,cAMP/cGMPによる成長円錐進路転換も抑制された。以上の結果から,局所cAMP/cGMPシグナルによる空間的に非対称な微小管動態の制御により,VAMP7動態が非対称化し,成長円錐の進路方向が決定されるとうモデルを提唱できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に微小管の先導端への接触と接触部位の突出に正の相関を発見した。平成24年度はこの発見を元にcAMP/cGMPによる成長円錐進路決定機構の探索を行い,微小管と共にVAMP7が重要な役割を果たすことを見出した。これにより,cAMP/cGMPによる成長円錐進路決定機構のモデルを提唱するに至った。さらに,カルシウムシグナルによる成長円錐の誘引にはVAMP2が重要であることと今回得られている結果を統合すると,セカンドメッセンジャーの違いによってSNAREタンパク質が使い分けられている可能性があり,非常に興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
cAMP/cGMPによる成長円錐進路決定にVAMP7が重要な役割を持つことを示唆するデータが得られている。平成24年度の研究においてVAMP7の機能を阻害するために用いたLDは,VAMP7以外のVAMPの機能を阻害している恐れがある。これまで得られた結果をより確実なものとするため,RNA干渉によるVAMP7ノックダウンを行う必要がある。また,現在まではケージド化合物による人工的なシグナルを用いて研究を行ってきたが,提唱するモデルが生理的軸索ガイダンス因子による軸索誘導にも適用できるかを検討する。具体的には,様々な細胞でcAMP濃度を上昇させることが知られているPACAPを用いて,1)成長円錐内での微小管動態,2)成長円錐内でのVAMP7の動態,3)PACAPによる成長円錐進路転換におけるVAMP7の必要性,を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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Research Products
(2 results)