2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23700464
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
辛島 彰洋 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (40374988)
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Keywords | 睡眠 / シナプス可塑性 / AMPA受容体 |
Research Abstract |
睡眠には、様々な機能があると考えられているが、覚醒時に疲労した脳の回復は最も重要な機能と考えられている。この機能の一つとして、睡眠中にはシナプス伝達効率が下がる、すなわち神経ネットワークのつながりが弱まることで、脳(神経ネットワーク)を回復しているとの仮説がたてられ、様々な角度から検証されている。我々は、睡眠中にシナプス伝達効率が下がるということが本当かどうかを調べる動物実験を行ってきた。 実験は、in vitro実験により行った。実験に用いる脳スライス標本を夕方に作成した場合(断頭前には睡眠をとっているので睡眠群と呼ぶ)と、朝方に作成した場合(断頭前には覚醒しているので覚醒群呼ぶ)で、シナプス伝達に関与するAMPA受容体の量に差があるかどうかを調べた。特に、注目しているのは、シナプス長期増強に伴って増加するCa透過性のAMPA受容体である。本研究では、2つの方法により検証した。まず、Ca透過性のAMPA受容体の拮抗薬を投与したときに、興奮性シナプス後電流(EPSC)に影響があるかどうかを調べた。その結果、覚醒群の標本では拮抗薬投与後にEPSCの振幅が有意に小さくなること、睡眠群の標本ではEPSCの振幅がほとんど変化しないことが分かった。次に、Ca透過性のAMPA受容体は内向き整流特性を示すのに対して、Ca非透過性AMPA受容体は整流特性を示さないという特徴を利用して、それぞれの標本においてIV曲線を描いた。その結果、覚醒群の標本でのみ内向きの整流特性があることが確認された。 以上の結果は、覚醒後の大脳皮質標本には、Ca透過性のAMPA受容体が存在する一方で、睡眠後の標本には、Ca透過性のAMPA受容体がほとんど存在していないことを示唆している。本研究の成果は、睡眠の役割の理解につながると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書ではin vitro実験とin vivo実験を平行して進めていくと計画していたが、in vivo実験に関しては準備に手間取ってしまい、未だ成果は上がっていないため、(3)やや遅れているとした。一方、in vitro実験は、解明を目指していたCa透過性AMPA受容体が睡眠時に減少することを示す結果を2つの異なる実験により得られたことから、計画通り進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
11で述べたようにin vivo実験の成果はまだ上がっていないという状況である。昨年度よりin vivo実験を始めており、成果は出つつある。一方、in vitro実験に関しては、現在は実験例数を増やしている段階であり、今年度中に成果を論文で発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
in vitro実験では、例数を増やしている段階であり、本年度も実験に使用する試薬等を購入する。また、in vivo実験では、脳活動の記録に必要な電極等の消耗品を購入する。 さらに、論文発表や学会発表等に研究費を用いる。
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