2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23700467
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
任海 学 新潟大学, 脳研究所, 助教 (10401770)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 高次視覚野 / 上丘 / プルビナー / 2光子蛍光顕微鏡 / 盲視 / フラビン / イメージング |
Research Abstract |
1.2光子蛍光顕微鏡を用いたカルシウムイメージングによる多細胞同時記録により、マウスの高次視覚野の神経の視覚応答特性を明らかにした。第一次視覚野および高次視覚野の5領野を同定した後、カルシウム蛍光指示薬を注入し、視覚刺激の速度・方向に対する反応特性を明らかにした。全ての高次視覚野は第一次視覚野と比較して早く、またそれぞれ異なる速度応答特性を持っていることが明らかになった。また高い方位および方向選択性を持っていた。これらのデータは、先行して行なっていたフラビン蛍光イメージングおよびユニットレコーディングの結果と一貫性があった。2.発達過程でストロボ下飼育をおこなったマウスの高次視覚野速度応答特性が著しく阻害されることがわかっていたが、その動物を通常環境に戻すことにより、正常な速度応答特性に回復することを明らかにした。3.V1破壊後も高次視覚野に刺激に対する反応が確認され、各領野独自の速度応答特性も残存することを明らかにした。一般的に高次視覚野の反応特性はV1からの入力に基づくものと考えられてきた。4.上丘破壊によって高次視覚野の独自の応答特性が消失することを明らかにした。3・4の結果から、高次視覚野の速度応答特性がV1からの入力ではなく、上丘-視床を経由する視覚経路に由来することが明らかになった。5.2条件弁別行動実験系を確立した。この実験系によりマウスの視覚認知機能を調べることが出来るようになった。国内外の学会にて以上の成果の発表をおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画では高次視覚野の中でもArea LIの形態に対する反応特性を調べることを目標とした。しかし他の高次視覚野についての知見もこれまでほとんど存在しなかったことから、Area LI以外のより低次と思われる領野に重点をおいて研究を行った。その結果、Area LIについての研究に大きな進展はみられなかったが、高次視覚野についての多くの重要な知見を得ることができた。各高次視覚野の基本的な特性や、その特性の形成機構等が明らかになった。これらの知見や習得された実験技術は、Area LIの研究の基礎となり、またそのまま応用も可能である。特に2光子蛍光顕微鏡による多細胞同時記録を安定して行うことが出来るようになったため、Area LIの活動特性を測定することが可能になった。計画では視覚刺激に用いた図形のデコーディングを行う予定であったが、ただちに行う事ができる。計画では形態視の能力を測定する予定であったが、2条件弁別行動実験系も確立し、予備実験としてマウスの視力を測定した。これを用いて図形弁別学習を行うことが出来るようになった。このようにArea LIの形態視との関わりを明らかにする準備が整った。
|
Strategy for Future Research Activity |
第一にArea LIの形態視における役割の評価を行うことが重要だと考えられる。マウスの図形に対する弁別能力はほとんどわかっていない。そこで2条件弁別行動実験によってマウスの図形の弁別能を調べる予定である。それが明らかになった後、Area LIの破壊による図形弁別能力の影響を評価する。Area LIの細胞の活動と刺激に用いる図形との関係を明らかにする必要がある。2光子蛍光顕微鏡による多細胞同時記録が安定して行えるようになったため、Area LIの基本的な応答特性を観察し他の高次視覚野との比較を行う。数十の細胞を同時に記録できるようになったことから、特定の図形刺激に対する反応のデコーディングを行う。また学習によるArea LIの反応特性に変化が見られるか、観察を行う。これらの実験によりArea LIと形態視の関わりが明らかになるであろう。 第二に、2つの視覚経路によるArea LIの活動への影響を明らかにする。我々は高次視覚野の特性がV1からの入力よりも上丘系視覚経路からの入力に強い影響を受けていることを明らかにした。そこでArea LIの活動がこの2つの視覚経路にどの様な影響を受けるかの検証を行う。特にArea LIの視覚刺激形態の変化によく応答する特性が、どちらの経路に由来するかは重要な問題である。V1破壊によってもある程度の視覚による弁別能力があるようであるが、2条件弁別行動実験により、形態視におけるV1の影響を評価する。また2光子蛍光顕微鏡を用いた図形刺激に対する反応のデコーディングが確立した後、V1破壊後の図形に対するArea LIの反応も測定する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既存の実験機材の応用により多くの実験が行えたため、前年度初めに計画していた予算よりも使用額が少なく次年度に持ち越すこととなった。今後は2光子蛍光顕微鏡による多細胞同時記録が実験の中心となるため、その測定のための環境をより充実させる必要がある。動物の固定器具やカルシウム蛍光色素注入のための機材等を購入する予定である。多細胞の活動のデコーディングを新たに行うために必要なソフトウェアやコンピューター周辺機器等を購入する予定である。また研究成果の発表を国内・海外の学会等で行う、また共同研究のための打ち合わせのための旅費等に使用する。
|
-
[Presentation] 上丘を経由するマウス高次視覚野の応答2011
Author(s)
Manavu Tohmi, Reiko Meguro, Ryuichi Hishida, Masao Norita, Katsuei Shibuki
Organizer
日本神経科学大会
Place of Presentation
パシフィコ横浜
Year and Date
2011年9月16日
-