2011 Fiscal Year Research-status Report
活動電位と起動電位の動的関係に基づく味物質濃度検出機構
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23700469
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
大坪 義孝 九州工業大学, 生命体工学研究科(研究院), 助教 (00380725)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 味蕾細胞 / 活動電位 / 電位依存性チャネル / パッチクランプ法 / single cell RT-PCR / 免疫染色 |
Research Abstract |
味物質受容細胞である味蕾細胞は、活動電位の繰り返し発火が困難な細胞であることを私は発見した(Ohtubo, 2009)。本研究では、味蕾細胞は味の濃淡をどのような生体信号に変換しているのか?膜電位(活動電位と起動電位)に注目し、味物質濃度検出機構を解明することを目的としている。23年度の実施計画では、活動電位の上昇相および下降租形成に関与するイオンチャネルの性質と種類について、電気生理学的に調べた。味蕾細胞は、I型~IV型の4種類の細胞型に分類され、特に、II型およびIII型細胞が、味情報検出に重要な役割を担っている。従って、イオンチャネルの性質は、常に細胞型(免疫染色性による細胞型の分類)と関連付けて、解析を行った。II型およびIII型細胞の電位依存性内向き電流(Naチャネル電流)および電位依存性外向き電流(Kチャネル、Clチャネル電流)は、II型およびIII型マーカーに陰性細胞の電流より大きいこと、II型とIII型細胞間で外向き電流に対する薬理学的性質が異なる、つまり、イオンチャネルの種類が異なること、細胞型によって活動電位の幅や形が異なることを明らかにした。また、味蕾に発現する電位依存性Naチャネルの遺伝子サブタイプの同定に関する研究では、味蕾には数種類の遺伝子サブタイプが発現することを明らかにした。そのサブタイプのうち、1種類は、電位依存性Naチャネルに特異的なブロッカーであるテトロドキシン(TTX)に対する感受性が低いものであった。電気生理学的測定結果も、TTX低感受性チャネルの存在を示唆した。味蕾細胞には少なくとも2種類以上の電位依存性Naチャネルサブタイプが発現していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度の実施計画では、(1)活動電位の上昇相・下降相形成に関与するイオンチャネルの電気生理学的特長と細胞型との関係解明、(2)味蕾に発現する遺伝子サブタイプの同定を目的としていた。(1)に関しては、電位依存性電流の大きさおよび薬理学的性質と細胞型との関連性を調べ、細胞型間で電位依存性電流の性質が異なることに加え、活動電位の波形が異なることも明らかにした。現在、投稿準備中であり、目的は達成できたと考えた。(2)に関しては、活動電位の上昇相を形成する電位依存性Naチャネルについて遺伝子同定が完了した。しかし、下降相を形成する電位依存性チャネルの同定については、まだ完了していない。(1)の結果から、細胞型間で電位依存性外向き電流の種類が異なることが分かり、候補となる遺伝子の種類が増え、同定までに時間を要している。23年度全体の実施目的の7~8割程度を達成できたので、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度の研究目的達成度がおおむね順調に進展していると考えているので、当初の研究計画に従って、引き続き研究を推進する。23年度実施計画の未達成部分の研究を行い、下降相形成に関与するチャネルの遺伝子同定を行う。これらの結果を基に、各電位依存性チャネルサブタイプと細胞型との関連をSingle Cell RT-PCR法で解明する。各細胞型マーカーに特異的なプライマーを設計し、単一味蕾細胞を味蕾から単離することで、味蕾細胞型とチャネルサブタイプの関係を明らかにする。味物質濃度と活動電位(活動電流)および起動電位の関係を調べる。味蕾細胞の細胞内環境を保持した状態で測定するcell-attached法を用い、味刺激よって生じる活動電位を活動電流の形で測定する。電気測定終了後、細胞内にマーカー分子を導入し、免疫染色法を用いて、測定した細胞の細胞型を同定する。味質と細胞型および発火頻度の関係を明らかにする。穿孔パッチクランプ法で同様の実験を行い、味物質濃度変化に対応し、膜電位および活動電位がどのように変化するのかを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究計画では、23年度実施計画の未達成部分の研究遂行および単一味蕾細胞を用いた遺伝子同定を行う予定なので、遺伝子増幅装置を購入予定である。当初の計画では、23年度購入予定だったが、遺伝子同定の実験に時間を要しているため、次年度購入とした。単一味蕾細胞からの遺伝子同定を行うため、プライマーおよび関連試薬の購入および細胞同定に必要な抗体を購入予定である。また、穿孔パッチクランプ法に必要な酵素類および各種生理的塩類溶液など購入予定である。23年度の研究成果を国際発表するための旅費および国際誌への学術論文投稿に必要な経費(論文校正費、投稿料、カラー掲載料など)を要する。
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