2011 Fiscal Year Research-status Report
ラット脊髄後角の痛覚情報伝達制御におけるTRP機能のプロテアーゼ受容体による修飾
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23700470
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
藤田 亜美 佐賀大学, 医学部, 准教授 (70336139)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 神経生理学 / プロテアーゼ受容体 / TRPチャネル / 脊髄後角 / 痛覚情報伝達 / パッチクランプ法 / 興奮性シナプス伝達 / 抑制性シナプス伝達 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「TRPチャネルとプロテアーゼ受容体のそれぞれのサブタイプ間での多様な相互作用が、ラット脊髄膠様質における神経回路を介して痛覚情報伝達の修飾にどのような影響を及ぼしているのか」を、シナプスレベルでより詳細に解明することである。 本年度の研究として、ラット脊髄横断スライスの膠様質ニューロンにブラインド・ホールセル・パッチクランプ法を適用し、グルタミン酸作動性の自発性興奮性シナプス後電流(sEPSC)の発生頻度や振幅に対して、TRPの活性化がどのように作用するのかについて検討した。まず、TRPV1作動薬として知られているオルバニルと黒胡椒成分由来のピペリンが自発性興奮性シナプス伝達に及ぼす作用について調べた。オルバニルは自発性興奮性シナプス伝達に影響を及ぼさなかったが、ピペリンは濃度依存的かつTRPV1阻害薬であるカプサゼピン感受性にsEPSCの発生頻度を増加させた。また、月桂樹由来のオイゲノール、および、生姜の刺激成分ジンゲロンはTRPV1を活性化することが報告されている。そこで、これらオイゲノールとジンゲロンが自発性興奮性シナプス伝達に及ぼす作用について調べた。その結果、オイゲノールとジンゲロンは共に濃度依存的にsEPSCの発生頻度を増加させることを見い出した。さらに、この興奮性シナプス伝達促進作用は、非選択的TRP阻害薬ルテニウムレッドやTRPA1阻害薬HC-030031存在下では抑制されたが、TRPV1阻害薬であるカプサゼピン存在下ではこの促進作用は影響を受けなかった。 以上より、ピペリンはTRPV1を、オイゲノールとジンゲロンはTRPA1を、それぞれ活性化して膠様質ニューロンへのグルタミン酸の自発放出を促進すると結論される。今後、これらの試薬によるTRP活性化とプロテアーゼ受容体活性化との相互作用について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロテアーゼ受容体とTRPチャネルとの相互作用それ自体についてはまだ十分な検討ができていない。しかしながら、TRPチャネル活性化による脊髄後角第II層(膠様質)ニューロンの電気的応答については、今回、様々な知見が得られた。すなわち、ピペリンはTRPV1チャネルを、オイゲノールとジンゲロンはTRPA1チャネルを、それぞれ活性化して膠様質ニューロンへのグルタミン酸の自発放出を促進することを見出した。今後は、今回得られたTRPチャネル活性化に関する情報とプロテアーゼ受容体の活性化との相互作用について検討する。以上のことから、研究は若干の遅れは見られるものの、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究として、ラット脊髄横断スライスの膠様質ニューロンにブラインド・ホールセル・パッチクランプ法を適用し、グルタミン酸作動性のsEPSCの発生頻度や振幅に対して、TRPチャネルの活性化がどのように作用するのかについて検討した。その結果、ピペリンはTRPV1チャネルを、オイゲノールとジンゲロンはTRPA1チャネルを、それぞれ活性化して膠様質ニューロンへのグルタミン酸の自発放出を促進することを見い出した。今後、ピペリン、オイゲノール、ジンゲロンなどによるTRPA1やTRPV1の活性化とプロテアーゼ受容体の活性化との相互作用について検討を加える。また、TRPM8活性化とプロテアーゼ受容体活性化との相互作用についても検討を加えたい。さらに、興奮性シナプス伝達に加えて抑制性シナプス伝達についても本年度と同様に、TRPチャネル活性化とプロテアーゼ受容体活性化との相互作用の効果を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で相互作用を検討する対象であるTRPチャネルやプロテアーゼ受容体の各サブタイプについて、その選択的な作動薬や阻害薬は高価なものが多い。そのため、まずはTRPチャネル活性化について重点的に検討した本年度においては研究費を極力抑え、「次年度使用」として次年度以降における選択的な作動薬や阻害薬の購入に充てたいと考えている。
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