2011 Fiscal Year Research-status Report
発生期の生理的低酸素での幹細胞から神経系への分化誘導とその分化機構の解明
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23700471
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
三角 吉代 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70529148)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | オリゴデンドロサイト / 低酸素 / マウスiPS細胞 / 細胞移植 / 磁気ビーズ |
Research Abstract |
本研究の目的は、発生時の生理的条件である低酸素条件に注目し1) in vitroで幹細胞(ES細胞、iPS細胞)からオリゴデンドロサイト(OLG)の効率的な分化誘導について検討する、2) 低酸素下での神経系発生時におけるHIF1-αの関与を調べ、分裂期から分化へ向かう機構を細胞周期制御因子との関連から解析する、3)細胞磁気選別法によりオリゴデンドロサイト細胞のみを選択し、ES細胞, iPS細胞から効率的かつ腫瘍化の危険性のない細胞選別を行い、幹細胞を用いた細胞療法の課題に取りくむことである。本年度はiPS細胞からのオリゴデンドロサイト分化誘導法の確立、磁気細胞法による細胞選別、低酸素条件下での分化の影響について検討を行った。マウスiPS細胞からオリゴデンドロサイトへ7段階のステップにより分化誘導を行った。免疫染色法により、24%がO4陽性の未分化OLGヘ分化すること、さらにMBP陽性の成熟OLGへと分化すること確認した。抗SSEA-1抗体を用いた選別回収(MACS)を行い、SSEA-1陽性の未分化細胞未分化細胞の混入を1%以下に減少させることが可能となり、移植時にテラトーマを形成しうる細胞の除去が可能となってきた。また、分化における低酸素の影響を明らかにするため、OLG前駆細胞を3.5%酸素の低酸素条件の培養した結果、通常酸素濃度(20%)に比べてOLG前駆細胞の増殖が促進されることが分かった。一方、未分化OLGの細胞移植では、単離化細胞ではなく細胞塊とした後に脳内移植した方が移植後の細胞生着が良いことが明らかになってきた。現在、低酸素誘導因子HIF-1α、細胞周期関連因子(p27kip1など)との関連を主に、細胞内での増殖促進のメカニズムについて解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
7段階法を用いたiPS細胞からのOLG分化はES細胞を用いた場合と同様に順調に進んだ。各分化段階における免疫学的解析により、グリア前駆細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞、成熟オリゴデンドロサイトへの分化誘導が確認できた。また、今回の培養法では24%が未分化OLGに分化した。今回用いた7段階の培養法ではOLGの各分化段階での細胞を用いた解析が可能であると考えられる。また、低酸素条件下での培養実験では、OLG前駆細胞の増殖促進効果がみられたため、iPS細胞,ES細胞を用いた細胞移植実験に応用できる可能性もあり、細胞内でのメカニズムについて検討を行っている。低酸素条件でのメタボローム解析については実施できなかったが、全体として概ね順調に進展していると考えている
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Strategy for Future Research Activity |
低酸素培養条件下でOLG前駆細胞の増殖が促進されることを確認したので、細胞内メカニズムの解析を行う。1)低酸素誘導因子HIF-1αおよび関連因子(EPO,VEGF,HIF分解酵素など)の発現をreal-time PCR, western blotting法により確認する。2)HIF-1αの発現抑制実験(RNAi)、発現促進実験(分解酵素阻害剤投与など)を行い、OLG前駆細胞における増殖への影響、また細胞周期調節因子(p27kip1, p57kip1, TGF-β1)などの発現に対する影響について検討を行う。iPS細胞から分化誘導させたOLGで内向き整流性K電流の電気生理的測定を行い、ラット脳由来OLGの電流と比較することでiPS由来OLGが生理的性質を持っているかについての検討を行う。移植実験については、細胞標識したiPSを用い、細胞塊にしたOLG前駆細胞をラット脳内へ移植する予定である。MACSによりSSEA-1陽性の未分化細胞の除去ができていると考えられるのでラット脳内への移植後の腫瘍化について検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
iPS細胞の培養実験に必要な培養液と各栄養因子の購入、HIF-1αおよび関連因子の発現解析や分子生物学実験における試薬、消耗品購入費として研究費を使用する。また、iPS由来OLG前駆細胞の移植実験を行い、細胞の分化、腫瘍化についての検討を行う予定であるので、そのための動物購入/飼育費として研究費を使用する。
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