2011 Fiscal Year Research-status Report
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23700473
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
石川 太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (50547916)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ニューロン / シナプス / 神経回路 |
Research Abstract |
ラットの小脳半球の背側傍片葉(dorsal paraflocculus)と呼ばれる領域の顆粒細胞には高密度の視覚信号が入力していることが我々の未発表研究で明らかになっている.本研究ではこの経路の下流に位置するプルキンエ細胞における視覚誘発性応答を精査し,さらに視覚刺激を用いて平行線維プルキンエ細胞間のシナプス可塑性を誘導することを目指している.また可塑性の誘導には登上線維の活動が重要であることから,背側傍片葉領域における登上線維の活動を誘発する刺激を探索することも本研究の重要な課題である.平成23年度においては,視覚刺激によるプルキンエ細胞の応答を調べた.その結果,視覚刺激により単純スパイクの増加が観察された.このことは,予測された通り,顆粒細胞(平行線維)からの興奮性入力がプルキンエ細胞の発火頻度を増加させていることを示唆している.一方で,複雑スパイクの頻度が視覚刺激によって増加することはなかった.このことは,視覚刺激によっては登上線維経路の活動は影響を受けないことを示唆している.さらに,体表面への局所的空気圧刺激による触覚刺激によっても,登上線維経路の活動が誘発されることはなかった.そこで,登上線維を活性化させる刺激を探索するために,大脳皮質視覚野を直接的に電気刺激する方法を用いたところ,プルキンエ細胞において単純スパイクと複雑スパイクを誘発することが可能であった.現在は,刺激部位の僅かな違いにより,単純スパイクと複雑スパイクを独立的に誘発する刺激方法を探索しており,これによりプルキンエ細胞における視覚信号処理の特徴を抽出できるものと期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の目的は2項目からなっている.1つめの「小脳の視覚情報処理様式の検討」については,プルキンエ細胞からの記録により,平行線維を介した視覚信号がプルキンエ細胞に到達していることが示された.2つめの「登上線維入力を惹起する感覚刺激の同定」については,触覚刺激等の自然な刺激を用いて,登上線維の活動を誘発することには成功していないが,代替策として大脳皮質を直接刺激することで登上線維の活動を惹起することに成功しており,このことは大脳・小脳連関の仕組みを知る上でも興味深い知見である.以上より,本研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
登上線維入力を惹起する感覚刺激の同定を行うためには,プルキンエ細胞から効率よくユニット記録を行う必要がある.このため,多チャンネル記録を用いて複数のプルキンエ細胞から同時記録を行い,実験効率を高めて行く.これにより,プルキンエ細胞における可塑性の誘導という目的をより早く達することを目指す.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度においては,最近発売されたマイクロマニピュレーターを購入した.これは当初購入を計画していたマイクロマニピュレーターより安価であったため,平成23年度収支に残金が生じた.平成24年度においては,この残金を用いて,より効率よくプルキンエ細胞からの記録を行うための多チャンネル記録装置を導入し,研究の効率化を図る.また,実験動物,試薬,及びその他の消耗品を購入するために相当の研究費を必要とする.
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