2011 Fiscal Year Research-status Report
中枢シナプス前末端Caチャネル密度と単一チャネルコンダクタンスの生後発達変化
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23700474
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
中村 行宏 同志社大学, 研究開発推進機構, 研究員 (40460696)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 脳・神経 / 神経科学 / 共焦点顕微鏡 / Caチャネル / 生理学 / シナプス伝達 / シナプス前末端 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
(1)ノイズ分析によるシナプス前末端Caチャネルの単一チャネルコンダクタンスの推定:生後1週齢のラット脳幹calyx of Heldのシナプス前末端からホールセルパッチクランプ記録を行い、脱分極によって誘発される電位依存性Ca電流を記録した。Ca電流の波形にノイズ分析の手法を適用して推定した単一チャネルコンダクタンスの値は1.3 pSであった。生後2週齢ではのチャネルコンダクタンスは1.2 pSであり、聴覚の獲得前後でシナプス末端に発現する単一チャネルコンダクタンスには変化が生じないことが明らかになった。このシナプスでは、生後1週齢から2週齢にかけて前末端に発現するCaチャネルサブタイプのうちCaV2.2及びCaV2.3が消失し、CaV2.1に置換することが知られているが、この結果は、Caチャネルサブタイプ間で単一チャネルコンダクタンスには大きな差がないことを示唆する。(2)局所Ca光学測定によるCaチャネル密度の推定:calyx of HeldにCa感受性色素を注入し、脱分極によって誘発されるCa流入を、高時間分解能(100kHz)の共焦点顕微鏡点スキャンで観察した。数ミリ秒の脱分極を100Hzで付加したところ、各刺激毎に独立したCaの一過性上昇が観察された。Ca 上昇の振幅と、上記求めた単一チャネルコンダクタンスに基づいた細胞内のCaの拡散シミュレーションから、共焦点スポット内に存在するCaチャネルの数は、生後7日齢のシナプス前末端では約10個であると推定された。チャネル数は生後発達に伴い減少する傾向が認められたが、さらなる検討を要する。またCa上昇には20%の割合でfailureが観察された。これは、Caチャネルの開閉にstochasticな性質があることを示すものである。光学測定実験は、フランス・パスツール研究所との共同研究で実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経末端に発現するCaチャネルの、単一チャネルコンダクタンスおよびその生後発達については、目標通り明らかにすることができた。また光学測定とシミュレーションに基づいて、共焦点スポット内のチャネル数も明らかにできた。しかし、神経末端のチャネル総数については、情報が得られていない。ホールセルパッチクランプ法によって記録されるCa電流にノイズ解析を適用するには、Caチャネルの成分以外に由来する電流の分散値を最小化する必要がある。Calyx of Heldシナプスの場合、前末端につながる軸索の膜容量成分が電位固定の不全をもたらし、電流の分散値を増大の原因となる。条件検討の結果、脱分極刺激を小さくすると、軸索由来の電流のゆらぎを排除しきれいな電流の平均分散プロットを作成できることが明らかになった。しかしこの場合、プロットの立ち上がりの傾きから単一チャネルコンダクタンスの推定は可能であっても、プロットの収束点までのデータを得られず、神経末端に発現するチャネルの総数を推定できない。チャネルの総数を調べるためには、強い脱分極刺激による誘発が必要でるが、種々の脱分極刺激を試しても軸索由来の電流のゆらぎを排除することは困難であり、軸索を物理的に切断する等抜本的な実験方法の改善が必要かもしれない。24年度に予定している、シナプス伝達実験へ向けた準備は、順調に進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
神経末端に発現するCaチャネルの総数の測定に注力する。Caチャネル以外の成分に由来するCa電流の分散を減少させるためには、神経末端に接続する軸索の長さの最小化が有効である。このために、(1)脳スライススライス内部で軸索が切断されやすいような角度で脳スライスを作製する、(2)パッチ電極内に蛍光色素を導入して、軸索の長さを形態学的に測定、一定の長さを超えたものについてはデータを棄却する、といった方法を検討する。しかし、これらの方法でも有効な解決策が見いだせなかった場合には、電気生理学的にCaチャネルの総数を求めることは諦め、現在得られている光学的測定のデータと解剖学的な傍証より、チャネル総数を推定することとする。生後発達によってCaチャネル単一チャネルコンダクタンスに変化がなかったことは、Caチャネルサブタイプ間で単一チャネルコンダクタンスに大きな差がないことを示唆する。従って、各チャネル毎の単一チャネルコンダクタンスの推定は行わないこととしたい。単一共焦点スポット内部のCaチャネル密度の変化については、さらなる追加実験が必要である。本年9月頃に渡仏し、パスツール研究所にて2度目の共同実験を実施する。単一チャネルコンダクタンスに変化が認められなかった一方、単一共焦点スポット内部のCaチャネル密度が減少するという結果は、Caチャネル-シナプス小胞間の結合強度の生後発達変化の一因が、チャネル密度変化である可能性を強く示唆する。シナプス前末端Caチャネル量の変化を人工的に模倣し、異なったCa濃度存在下におけるシナプス前末端におけるEGTAの興奮性シナプス電流抑制作用の測定、ならびにシナプス伝達におけるCa cooperativityを測定し、チャネル密度変化がシナプス伝達に与える生理学的な影響を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
23年度予算で購入予定としていたCa測光用のCCDカメラは、本学内にあるものが使用できることが明らかになり、購入を見送った。実験に幼若ラットを日常的に使用するが、学内の施設では繁殖できないため、毎週業者から購入することになる。消耗品の多くは動物の購入費に充当する。また光学測定の一部は、フランス・パスツール研究所の機器を利用せざるをえないため、海外渡航費に相応の支出を予定している。
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Research Products
(2 results)