2011 Fiscal Year Research-status Report
神経保護作用を担うアストロサイトの発達に伴うシナプス伝達変化に関する研究
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23700476
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
桂林 秀太郎 福岡大学, 薬学部, 助教 (50435145)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | アストロサイト / 老化 / シナプス伝達 / サイレントシナプス / オータプス |
Research Abstract |
脳の老化に伴って、アストロサイトにも加齢的変化が生じる。しかし、シナプスを取り囲むアストロサイトの加齢が、シナプス伝達にどのような影響を与えるのか不明な点が多い。本研究代表者が当該研究課題に対して交付申請して以来、それを解明した研究報告は国内外ともに未だに皆無である。 本研究代表者は次に挙げる疑問を解決するために実験を行なった。(1)シナプスを支持するアストロサイトが老化的衰弱性を示した場合、シナプス機能は低下するか?(2)アストロサイトが加齢的安定性を示した場合、シナプス機能は強化されるか?(3)何れかのシナプス伝達変異が見つかった場合、その分子メカニズムは何か? 結果、以下のことが明らかとなった。(1)アストロサイトを長期培養(>9週間)すると老化マーカーであるβ-ガラクトシダーぜ染色陽性細胞が増加した。(2)老化アストロサイトと新生ニューロンを共培養しパッチクランプ法にてシナプス伝達を解析したところ、Evoked EPSCの減少は減少した。(3)自発性シナプス開口放出とシナプス小胞数は減少した。(4)免疫染色法により、興奮性シナプスをシナプス小胞蛋白であるVGLUT1抗体にて同定したが、シナプス数は変わらなかった。(5)アストロサイトを16週間培養して超加齢状態となるかを、染色法とパッチクランプ法で確認したが、アストロサイト9週間培養の結果と同程度であった。(6)シナプス伝達の低下には、シナプス後膜ではなく神経終末部におけるサイレントシナプスの発現率の増加が関与している可能性が示唆された。 以上の結果より、アストロサイト長期培養は老化モデルとして有用であると結論した。加えて、シナプス伝達の低下が明らかとなったので学術論文としてまとめ、専門誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.計画していた免疫染色において多重染色にも成功し、シナプスの同定に関して信憑性のあるデータを取得できた。2.本研究課題遂行にあたり、米国アイオワ大学のProf. Harataとの共同研究を開始することができた。3.次年度に論文投稿を予定していたが、23年度内に論文投稿することができ現在リバイスの最終段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度は、アストロサイトの老化により神経終末部におけるサイレントシナプス発現率は増加することを発見した。しかし、その発現メカニズムは不明のままである。そこで、次年度では以下の項目に焦点を当てて研究を遂行する。1.アストロサイトの長期培養によりアポトーシス様細胞が増加するかを核染色により確認する。2.神経終末部サイレントシナプスと興奮性シナプスの同時染色(Moulder et. al.)に挑戦し、アストロサイトの老化によるシナプス恒常性の変化を視覚的に捉える。3.アクティブゾーン関連蛋白であるBassoonが、アストロサイト老化によるシナプス変異のターゲット分子であることが予想できたので、BassoonとVLUT1を多重免疫染色することでアストロサイト老化による影響を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は免疫染色法を使った実験が主体となる。従って、抗体など比較的高価な消耗品購入が増えることが想像できるので、研究費の大半は実験標本の培養と免疫染色の消耗品代として計上する予定である また、米国アイオワ大学のProf. Harataとの共同研究の進捗状況にもよるが、次年度中に1度訪問することも考えている。
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