2012 Fiscal Year Annual Research Report
神経保護作用を担うアストロサイトの発達に伴うシナプス伝達変化に関する研究
Project/Area Number |
23700476
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
桂林 秀太郎 福岡大学, 薬学部, 助教 (50435145)
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Keywords | アストロサイト / シナプス / 老化 |
Research Abstract |
脳の老化に伴って、アストロサイトにも加齢的変化が生じる。しかし、アストロサイトの加齢が、シナプス伝達にどのような影響を与えるのか不明な点が多い。本研究代表者が当該研究課題に対して交付申請して以来、それを解明した研究報告は国内外ともに未だに皆無であった。 前年度までの結論では、①アストロサイトを長期培養(>9週間)すると老化マーカーであるβ-ガラクトシダーぜ染色陽性細胞が増加する、②老化アストロサイトと新生ニューロンを共培養すると、自発性シナプス開口放出とシナプス小胞数は減少する、④興奮性シナプス数は変わらない、⑤アストロサイトを16週間培養しても、9週間培養の結果と同程度である、ことが明らかとなった。すなわち、アストロサイトの老化によるシナプス伝達の低下には、神経終末部におけるサイレントシナプスの発現率の増加が関与している可能性が示唆された。 そこで最終年度では、サイレントシナプス発現を検証するために、同一細胞で蛍光観察して検証した。同一細胞で活動シナプスをFM1-43、興奮性シナプスをVGLUT1抗体で染め分けてサイレントシナプスの比率を定量したが、統計的に有意な差は認められなかった。加えて、アストロサイトの長期培養環境における老化促進のメカニズムに関しても実験を行なった。結果、長期培養によってGFAP発現率の増加が認められ、これは既に報告されている結果と一致した。一方、炎症マーカーであるNF-kappaBも定性・定量したが、有意な差は認められなかった。このことより、in vitroにおける加齢培養系は、炎症を伴わない老化であることが示唆された。 以上の結果より、アストロサイト長期培養系は老化モデルとして有用であると結論した。加えて、シナプス伝達の低下も明らかとなったので、学術論文としてまとめ、専門誌PLoS ONEに掲載された。
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