2011 Fiscal Year Research-status Report
大脳皮質における抑制性介在細胞ネットワークの錐体細胞による制御機構
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23700478
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
大塚 岳 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教 (10390692)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 介在細胞 / 錐体細胞 |
Research Abstract |
本研究は大脳皮質の情報処理様式を理解するために、皮質回路を構成する細胞間の結合特異性を明らかにすることを目標としている。本研究では、抑制性介在細胞同士の結合回路は錐体細胞サブネットワークからどのように入力を受け、制御されるのかを明らかにすることを目的とした。 本年度は、大脳皮質の主要な介在細胞であるfast-spiking(FS)細胞への錐体細胞の入力について5層において主に検討した。5層錐体細胞からの入力は、ガラス管を用いてグルタミン酸を錐体細胞の細胞体に短時間投与し興奮させ、シナプス入力の有無を検討した。その結果、FS細胞はnon-FS細胞と比べて錐体細胞からの入力確率が高かった。また、異なる逆行性蛍光トレーサーを対側前頭皮質と同側橋核に同時に注入して5層錐体細胞を投射先の違いで分類し、FS細胞へのシナプス入力における錐体細胞サブタイプ依存性について検討した。蛍光ラベルされた錐体細胞サブタイプを交互にグルタミン酸刺激しサブタイプ間の入力確率を比較したが、FS細胞は異なる錐体細胞サブタイプから同程度の確率で入力を受けていた。 FS細胞同士はギャップジャンクションを介して電気的に結合しており樹上突起網を形成していることが知られている。そこで、FS細胞サブネットワークへの錐体細胞の結合特異性を検討するためにFS細胞のペア記録を行い、錐体細胞からの共通入力確率を電気結合の有無で比較した。その結果、FS細胞間で電気結合がある細胞ペアにおいて共通入力確率が高かった。以上の結果から、5層FS細胞サブネットワークはFS細胞間の電気結合に依存して錐体細胞から特異的に入力を受け、FS細胞サブネットワークはネットワーク全体が同期的に活動するのでは無く局所的に活動が制御されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、錐体細胞から介在細胞への入力様式を解析する計画を立て実験を行った。その結果、ギャップジャンクションを介して電気的に結合したFS細胞サブネットワークへの錐体細胞の興奮性シナプス共通入力は電気結合に依存していることがわかった。当初の計画どおり研究は進んでおり、結果は十分に得られている。従って、今後の研究のさらなる発展が期待できるので。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、23年度で得られた結果を基にして、FS細胞サブネットワークへの興奮性シナプス共通入力における電気結合依存性の機能的意義についてより詳細に検討する。 錐体細胞からの共通入力がFS細胞間の電気結合に依存していたので、特に介在細胞間の結合パタン(電気シナプス、化学シナプス)による違いで錐体細胞からの共通入力による介在細胞の同期発火や興奮度の違いを比較する。 また、記録した細胞の形態をニューロルシーダを用いて3次元再構築することによって介在細胞へのシナプス結合部位などを定量化し形態学的基盤についても比較検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度では、今までに使用していた顕微鏡が老朽化していたので実験で使用する顕微鏡を新しく購入した。平成24年度では、蛍光ラベルされた介在細胞や逆行性蛍光トレーサーで投射先を同定した5層錐体細胞サブタイプから記録を行う計画であり、蛍光ラベルした細胞を新しい顕微鏡下で同定するために落射蛍光装置を購入する必要がある。そこで、平成23年度に配分されていた研究費を少額であるが、24年度に使用することにした。また、実験に必要な消耗品も随時購入する。本研究はおおむね順調に進んでおり、今後も研究計画どおり遂行する予定である。
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