2013 Fiscal Year Research-status Report
多チャンネル神経活動同時記録による大脳皮質‐脊髄連関機構の解明
Project/Area Number |
23700482
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
武井 智彦 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所モデル動物開発研究部, 客員研究員 (50527950)
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Keywords | 把握運動 / 運動制御 / 脊髄 / 一次運動野 / 霊長類 |
Research Abstract |
本研究の目的は、把握運動の制御において大脳皮質一次運動野から発せられた下行性運動司令が脊髄神経活動および筋活動レベルにおいてどのように階層的に変換されているのかを解明することである。前年度までに、覚醒行動下のサル(ニホンザル、オス)おいて、下位頸髄および大脳皮質一次運動野の神経活動と上肢筋群活動の多チャンネル同時計測を成功していた。 本年度の研究成果として各神経活動(脊髄、一次運動野)がどのような筋肉の運動細胞にシナプス効果を持たらしているのかをSpike-triggered averaging法により同定することに成功した。これにより、大脳皮質および脊髄においてどのように運動司令の階層的な変換を行なわれているのかを示唆する実験結果を取得することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標として、覚醒行動下のサルにおいて筋活動、脊髄および大脳皮質の神経活動を同時に記録し、(1)各神経活動が筋活動とどのような相関を持つのかをSpikeTriggeredAveraging法により同定し、(2)脊髄および大脳皮質の神経活動で把握運動制御にどのような機能的な差異があるのかを検討することを目的としていた。これに対して、本年度は(1)脊髄および大脳皮質一次運動野において手の運動ニューロンに単もしくは寡シナプス性の結合を行うニューロン群を同定し、(2)そのうち脊髄介在ニューロンは皮質運動細胞ニューロンに比べてより多数の筋肉を共活動させるような投射を持つこと、(3)一方、一次運動野の皮質運動細胞ニューロンはより少数の筋肉を選択的に制御するような投射パタンを持つことが明らかとなった。これにより、脊髄および大脳皮質一次運動野の神経活動の把握運動制御における解剖学的な差異を新しく示すことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果により、脊髄および大脳皮質一次運動野の神経活動の把握運動制御における解剖学的な差異を新しく示唆することに成功した。 そのため、今後はこれらの解剖学的な差異が、どのような機能的な差異をもたらすのかを検討するためより詳細な解析を行うことを計画している。具体的には、霊長類の把握運動を説明するモデルとして近年有力とされている「筋シナジー制御モデル」を元にして、脊髄神経活動および一次運動野神経活動が筋シナジーに対してどのような活動相関を示すのかを検討する。これにより、解剖学的な差異をもつ各神経活動がどのような機能的な差異を持つのかを検証できることが期待される。さらに、本研究課題の最終年度にあたりこれらの研究成果を学会発表および論文としてまとめていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度のうちに当該研究成果の論文発表をさらにもう一報行う可能性があったため予算を計上していたが、次年度以降へ繰越となったため。 次年度の研究計画として、筋・神経活動の信号処理および相関解析を行ない、その検討した結果を研究成果としてまとめていく予定である。そのため、主に、信号解析用の装置、ソフトウェア等の購入、論文執筆・投稿および学会発表のための予算使用を予定している。
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