2011 Fiscal Year Research-status Report
サル下側頭葉における無意識下での視覚情報処理様式の解明
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23700498
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
林 隆介 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究員 (80444470)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 視覚的意識 / 両眼視野闘争 / マルチ電極記録 / 視運動性眼振 |
Research Abstract |
本研究では、サルの下側頭葉に微小多電極アレイを埋め込み、ニューロン活動を多チャンネル同時記録することで、神経群の活動パターンが意識の有無に依存してどのように変化するのか解明することを計画している。具体的には、両眼視野闘争刺激を観察中に、サルの眼球運動を計測し、その応答から、現在意識的に知覚している物体像を判定するパラダイムの検証を行う。その後、眼球運動を意識状態の指標として利用しながら、様々な視覚属性のうち、意識状態の変化によってどのような情報が下側頭葉のニューロンで表現されているのか解明するため、電気生理実験を行う予定である。 本年度は、96本の電極からなるアレイを二つ、32本の電極からなるアレイを1つ、合計224本の微小電極をサルの下側頭葉に埋め込み、多数の神経活動を同時記録することに成功した。さまざまな物体画像(100-250種類)を提示したところ、100チャンネル以上の電極から下側頭葉ニューロンの活動電位を記録することができ、さらに神経群の活動パターンのうち、顔画像処理に関する応答を詳細に解析することができた。その結果、顔の方位と個体識別に関する情報表現が同じ下側頭葉でも領域によって違うことが明らかになった。 また、quadrature motionという画像処理を使って、左眼画像を左方向、右眼画像を右方向に動かす特殊な両眼視野闘争刺激を生成し、ステレオ画像としてサルに提示する実験系を構築した。同刺激をサルが観察している間に生じる眼球運動を測定し、視覚体験の交代を視運動性眼振とよばれる反射性の眼球運動パターンから読み出せるかどうか検討した。 最後にquadrature motion刺激を提示している間、下側頭葉ニューロンの活動を記録したところ、運動方向によらず、物体像に特異的にニューロンが応答することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書では、本年度中に(1)最大192チャンネルの埋め込み型微小多電極アレイをサルの下側頭葉に埋め込み、多数の神経活動を同時記録する(2)両眼視野闘争刺激観察中に生じる視覚体験の交代を視運動性眼振とよばれる反射性の眼球運動パターンから読みだすことを目標とした。 本年度は、サルに224チャンネルの電極埋め込み手術を行い、100チャンネル以上の電極から神経活動の同時記録に成功するとともに、両眼視野闘争刺激観察中の眼球運動計測を行い、眼球運動パターンから視覚体験の反転が検出できるか検討を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の第二段階として「無意識下の物体画像に対する神経情報表現の検討」を達成目標とする。両眼視野闘争中、意識的には見えなくなった画像に対し、ITニューロンは集団としてどの程度、情報表現を保持しているのかを検証する。両眼視野闘争刺激の画像が意識的に知覚されたときと、知覚されなかったときとで、どれほど神経活動の情報量に変化があるかを調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
電極埋め込み手術に必要な試薬類などの消耗品支出にあてることを予定している。
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Research Products
(5 results)