2012 Fiscal Year Annual Research Report
情動が報酬獲得行動に及ぼす作用の単一ニューロン活動基盤
Project/Area Number |
23700501
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水挽 貴至 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60463824)
|
Keywords | 島皮質 / 単一ニューロン活動 / 報酬 / 情動 / モチベーション / 心拍数 |
Research Abstract |
生存の確率を変化させる外部要因を報酬と呼ぶ。環境中で報酬に遭遇すると、動物の心・体・行動は報酬の獲得に最適な状態に一時的に遷移する。我々はこの変化の総体を情動として体験する。情動は種や個体の生存の確率を最大化するのに重要な機能であるが、単一ニューロンレベルの実体は未だ明らかになっておらず、この解明に資すことが本研究の目的である。情動の心的側面は言語を通じてしか観察できないが、ニューロン活動は動物実験によってしか明らかにできないという問題がある。このジレンマを解消するため、本研究では、所定のタイミングでバーから手を放すのに成功すると報酬が与えられる課題をサルに行わせ、その最中の心拍数とニューロン活動を記録した。心拍数の変化は情動の身体的側面とよく関係することが既に報告されている。またニューロン活動は、情動の身体的反応を内受容を介して表象するとされる島皮質から記録した。その結果、心拍数と単位時間当たりの課題成功率に負の相関があることがわかった。報酬の属性以外の要因(身体覚醒度)がモチベーションに影響を及ぼしうる可能性を示した点は、情動の身体起源説や、ソマティック・マーカー仮説などとも合致し興味深い結果と思われた。また、島皮質のニューロンが、報酬期待と関係した系統的な活動を示すことを初めて明らかにし、英論文1報に発表した。島の活動は内受容の知覚と不可分でるとされる。したがってもし同様のニューロン活動が誘因なく発生すれば、「原因と実体なき心悸亢進の知覚」というパニック発作と類似の状態に至ると考えられ、同疾患の病態説明に一定の貢献ができたと思われた。さらに副次的な成果として、本研究での波形解析の過程で、ニューロン活動の波形には、帯域制限に伴うフーリエの不確定性原理の影響が大きいことを見出し、その成果を啓蒙的知見として英論文誌上で報告した。
|