2012 Fiscal Year Annual Research Report
中脳ドーパミン系による長期的な将来報酬価値の脳内計算機構
Project/Area Number |
23700503
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
榎本 一紀 玉川大学, 脳科学研究所, 嘱託研究員 (10585904)
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Keywords | 神経化学 / ドーパミン / 霊長類 / 報酬 / 意思決定 / 学習 / 強化学習 / 生理学 |
Research Abstract |
本研究課題では、中脳ドーパミン細胞が長期的な将来報酬情報を表現する、という仮説を検証するため、ニホンザルを被検体として、意思決定をともなう行動選択課題を学習させ、課題遂行中のドーパミン細胞の活動を記録した。課題は、一連の行動によって複数回の報酬(ジュース)が得られるようにデザインし、動物は学習が進むにつれて、目前の一回分の報酬ではなく、長期的な、複数回の報酬を期待して行動するようになった。ドーパミン細胞は課題開始の合図である視覚刺激や行動結果を教示する音刺激などに対して応答を示し、それらの細胞活動は、将来期待される報酬の価値を表現しており、強化学習モデルを用いて計算した、長期的な報酬情報を反映していた。また、そのような活動は、学習が十分進行し、課題に習熟してはじめて観測されることが確かめられた。以上の結果を論文にまとめ、発表した。さらに、山田洋(国立精神・神経医療研究センター)と共同で行った研究においては、同じ課題を用いてニホンザルの線条体から神経細胞活動記録を行い、ドーパミン細胞が情報を送っている先の線条体においても、運動情報などとともに、長期的な将来報酬の情報が表現されていることを確かめ、論文として発表した。また、ドーパミン細胞活動の解析を進め、中脳において、長期的な報酬表現に部位特異性が認められる結果を得たので、これらの成果をまとめ、学会や研究会で発表した。 これらの結果は、人間や他の動物が、変動しつづける環境の中で、試行錯誤によって利得を最大化していくメカニズムとして、神経システムに実装されていると考えられている強化学習モデルについて、物質的基盤となる知見を提供する。また、目先の利得にとらわれず、長期的なゴールに向かって意思決定・行動選択をするための神経システムとして、ドーパミンや大脳基底核が中心的な役割を果たしていることを明らかにし、詳細な神経回路の解明に貢献する。
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Research Products
(5 results)