2011 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢による炎症性腸疾患修飾におけるPRRとサイトカインの役割の解析
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23700508
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
唐 策 東京大学, 医科学研究所, 助教 (00572166)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | C型レクチン / 腸内細菌叢 / サイトカイン / 炎症性腸疾患 / 遺伝子欠損マウス |
Research Abstract |
消化管に原因不明の炎症を引き起こす炎症性腸疾患や大腸がんは、近年日本において罹患率が大きく上昇していることから、その予防法及び新たな治療法の開発が強く求められている。これら腸疾患の発症には腸内細菌叢と免疫細胞の相互作用が極めて重要であることが知られている。そこで申請者は、βグルカン認識に関わるC型レクチン受容体Dectin-1に注目し、炎症性腸疾患および腸管ポリープ形成修飾における腸管内細菌叢のDectin-1を介したシグナルと自然免疫および獲得免疫系調節機構の解明を目指す。本研究では遺伝子欠損マウスを用いた誘導型大腸炎やポリープ自然発症モデルのin vivo解析と腸内細菌叢のメタゲノム解析を組み合わせて行い、最終的には腸疾患の予防、治療法の開発などの創薬への応用の可能性を探る。平成23年度にDSS飲料水内投与によってDectin-1遺伝子欠損(Clec7a-/-)マウスに急性大腸炎を誘導し、急性大腸炎の発症程度が野生型マウスより減軽することを確認した。メタゲノム解析法で野生型とDectin-1欠損マウスの腸内細菌叢の中にβグルカン産生性細菌、真菌などが存在するか検討し、細菌でなく、真菌が存在することが明らかとなった。野生型とDectin-1欠損マウスの腸内細菌叢を回収し、作製した無菌Dectin-1欠損マウスに経口感染させてから大腸炎を誘導し、その病態を評価することにより、野生型マウスよりDectin-1欠損マウスの腸内細菌叢に割合が顕著に増加した細菌はDectin-1の欠損による抗菌ペプチドレベル変化と関係することを明らかにした。また、大腸炎モデルにおけるDectin-1シグナルのTh細胞分化への影響も検討した。最後に急性大腸炎の発症を防ぐためにDectin-1のアンタゴニスト糖鎖物質の投与実験を行い、Dectin-1を標的とした予防法は効果があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度にDSS飲料水内投与によって誘導されたDectin-1欠損マウスの急性大腸炎の発症程度が野生型マウスと比べ減軽することを確認し、そのメカニズムについては、当初予想していたβグルカン産生性細菌、真菌などが存在すること以外は、regulatory T細胞がDectin-1欠損によって有意に増加し、炎症を抑えることも見出した。メタゲノム解析法でマウスの腸内細菌叢の中にβグルカン産生性細菌でなく、βグルカンを持つ真菌が存在することが明らかとなって、また当初に予想していなかった野生型マウスと比べDectin-1欠損マウスの腸内細菌叢に割合が著しく増加した細菌を同定した。野生型とDectin-1欠損マウスの腸内細菌叢を回収し、自作した無菌Dectin-1欠損マウスに経口感染させてから大腸炎を誘導し、Dectin-1の欠損で変化した細菌叢の炎症抑制性が移入ホストのDectin-1シグナルに依存していなく、つまり野生型マウスでも示したことを見出した。Dectin-1欠損マウスの腸内細菌叢に割合が顕著に増加した細菌はDectin-1の欠損による抗菌ペプチドレベル変化と関係することが明らかとなって、当初の計画により大幅に進んでいた。また、平成24年度に予定していた大腸炎モデルにおけるDectin-1シグナルのTh細胞分化への影響も一部検討した。最後に急性大腸炎の発症を防ぐためにDectin-1のアンタゴニスト糖鎖物質の投与実験を行い、Dectin-1を標的とした予防法は効果があることも明らかにしたため、当初の予定より全体的に計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に得られた結果を基にして、平成24年度に自然免疫細胞及びそれらが産生するサイトカインが病態形成を担っている急性大腸炎と異なる獲得免疫系のTh細胞の分化と増殖、そしてTh細胞から産生されるサイトカインが発症要因とした慢性大腸炎の発症におけるDectin-1の役割を検討する。続いてApcMin-Clec7a-/-マウスを作出し、腸管ポリープ形成におけるDectin-1の機能ついて検討する。最後にDectin-1の抗体・リガンド物質の投与実験を行い、Dectin-1を標的とした腸管ポリープ・腫瘍形成の予防・治療法は効果があるかを評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)Dectin-1の慢性大腸炎発症における役割の解明、2)腸管ポリープ形成とDectin-1の役割の解明、3)食餌性βグルカンが腸管ポリープ形成に与える影響の解析以上三つは平成24年度の研究計画であり、それらを達成するため全体的に研究費の使用概要は以下のようになる。1.物品費 1,250,000円 疾患モデルの作成やモデルを用いて解析は実験用マウスの購入、飼育、管理費用および実験用消耗品と試薬、共通施設の利用にかかる費用(一般試薬310,000円、培地・血清220,000円、プラスチック類100,000円、マウス310,000円、マウス飼育費310,000円)2.その他 100,000円 実験データ解析用パソコンとソフトウェアおよび実験用ノート、ペンなどの購入費用3.旅費 250,000円 最終的に得られた研究成果を取りまとめ、国内外学会発表を行うための費用(国外学会200,000円、国内50,000円)
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Research Products
(4 results)