2011 Fiscal Year Research-status Report
マウス肝炎ウイルスに対する抵抗性機構の解明と抵抗性マウスの樹立
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23700520
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
平井 明香 国立感染症研究所, 動物管理室, 主任研究官 (50450557)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 感染症 / ウイルス / 実験動物 |
Research Abstract |
SJLマウス体内でのCEACAM1b(1b)のMHV受容体機能について、マウス腹腔マクロファージ(peritoneal macrophage, PM)を用いてex vivo実験系で解析を行った。具体的にはまず、1bがマウス体内でMHV受容体として働くか否かを明らかにするために、抗1bモノクローナル抗体(1baを認識しない)によるSJLマウスPMでのMHV感染阻止を調べた。PM表面の1bに抗体を結合させた後MHVを接種し、培養上清中の感染性ウイルス量をプラークアッセイで、感染細胞中のウイルス抗原を抗MHV抗体を用いた間接蛍光抗体法により検出した。その結果、SJLのPMへのMHV感染阻止が認められた。一方B61baマウスのPMではMHV感染が認められなかった。したがって、1bはマウス体内でMHV受容体として機能すると考えられた。そこで次に、1bがマウス体内で受容体として働く一方、なぜ1baが受容体として働かないのかを明らかにするために、SJLマウスとB61baマウスとの交配により得たF1マウスを用いてCEACAM1の受容体機能を補助する因子がSJLマウスに存在するか調べた。前述と同様にしてF1マウスのPMを用い抗1b抗体で感染阻止実験を行った。その結果、F1マウスのPMはMHVに感染し、その感染は抗1b抗体で阻止された。このことから、1bはF1マウス体内でMHV受容体として機能するが、1baは機能しないと考えられた。したがって、SJLマウスにCEACAM1の受容体機能補助因子が存在するのではなく、1baが受容体として働かない別の分子機構が存在することが示唆された。以上の研究成果はこれまで報告されておらず、本研究で初めて明らかになったものであり、本研究の目的であるマウスのMHV抵抗性機構を解明する上で不可欠な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
該当年度の研究実施計画に沿って実験を行い、目標としていた研究成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
CEACAM1ba(1ba)がマウス体内で受容体として機能しない分子機構として、1baの受容体機能を阻害する分子がマウス体内に存在することが考えられることから、マウス血清および細胞に1ba阻害分子があるか調べる。血清因子の解析には、申請者がすでに樹立した1ba、1bおよびCEACAM1a(1a)をそれぞれ恒常的に発現するBHK細胞株(BHK-1ba、BHK-1bおよびBHK-1a)を用いる。BHK-1baはMHVに感染することがわかっている。そこでB61baあるいはB6マウス血清を用いて感染阻害実験を行う。血清中には非特異的に抗ウイルス作用を示す物質が含まれる可能性があるため、阻止がみられた場合は1ba特異的およびMHV特異的であることを確認するために、BHK-1bおよびBHK-1a細胞や他のコロナウイルスを用いて、同様に感染阻止実験を行う。阻害分子同定は、バキュロウイルスで発現させたタグ融合1ba蛋白質と血清をインキュベート後、血清中の1ba結合性蛋白質をタグに対するアフィニティーカラムにより分離し、質量測定する。一方、マウス細胞に阻害因子が存在する可能性も考えられる。そこでB61baマウス細胞(PM、胎児線維芽細胞初代培養、肝細胞初代培養)に発現ベクターを用いて1baを発現させて、MHV感受性を調べる。MHVが感染しなかった細胞にタグ融合1ba蛋白質を発現さて、タグに対するアフィニティー精製で1ba結合蛋白質を分離し、質量測定して阻害因子を同定する。これをBHK-1ba細胞に発現させてMHV感受性が低下するか調べる。コントロールとしてBHK-1b、BHK-1a細胞にも発現させて同様に調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品費設:解析に必要な試薬(リアルタイムPCR、トランスフェクション、蛋白質電気泳、プロテインシーケンス)を購入する。また、マウス腹腔マクロファージ、胎児繊維芽細胞初代培養および肝細胞初代培養を得るためにマウスを購入する。いずれも滞りなく本研究を遂行するために必要不可欠な経費である。旅費:日本ウイルス学会学術集会に参加し研究成果を報告する。また米国ウイルス学会に参加し、様々なウイルス感染症とその病原性発現に関わる宿主因子に関する最新知見を得て、本研究の進展に役立てる。謝金等:英文校閲費に使用する。その他:研究成果はすべて国際学会誌に論文として発表することを目標にしているため、その費用として使用する。
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