2011 Fiscal Year Research-status Report
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23700522
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Research Institution | 独立行政法人医薬基盤研究所 |
Principal Investigator |
内尾 こずえ 独立行政法人医薬基盤研究所, 難病・疾患資源研究部, 主任研究員 (70373397)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 実験動物 / 腎疾患 |
Research Abstract |
透析、腎移植が必要な腎疾患患者数の増加は医療費増大に直結しており、早急に解決しなければならない社会問題の一つである。そこで腎疾患発症機序解明、創薬・治療法開発に貢献することを目的とし、本研究において腎疾患発症に関連する遺伝子を同定後、汎用性の高い新規腎疾患モデルマウスの作製に取り組んでいる。今年度は腎疾患関連ゲノム領域を同定し、新規腎疾患モデルマウス作製に着手した。1.腎疾患関連ゲノム領域の同定:ネフローゼ症候群を自然発症し腎不全に至るICGNマウスおよびICGNマウスの原因遺伝子の一つであるtensin2の変異を持つコンジェニック系統であるD2GNマウスを用いたQTL解析を行った。D2GN系統はICGNマウスに比し腎病変が軽度であることから、ICGNマウスはtensin2以外にも腎疾患増悪因子を持つことが示唆されたため、腎疾患関連ゲノム領域の同定にこれら2系統を利用した。これら2系統のF2マウス300匹を作出し、血清生化学データ(アルブミン、クレアチニン、BUN、コレステロール)および腎臓器重量を指標としたQTL解析を行った。その結果、腎疾患に関連する領域(LODscore 4以上)が1、2、7、13、19番染色体に見つかった。さらにGeneChip解析によっても腎疾患関連遺伝子の同定を試みた。正常およびICGNマウスの糸球体・腎皮質・腎髄質で解析を行った結果、自己免疫疾患関連遺伝子が多く変動していることがわかった。そこで自己抗体の有無をELISA法にて解析した結果、ICGNマウスは抗ssDNAおよび抗dsDNA抗体を産生していることが明らかとなった。2.新規腎疾患モデルマウス作製:上記のゲノム領域を持つコンジェニックマウス系統の作製を開始し、現在4世代目を飼育しており、次年度には病態解析に使用可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は腎疾患発症機序解明、創薬・治療法開発に貢献することを目的とし、本年度は(1)腎疾患関連ゲノム領域の同定および(2)そのゲノム領域を持つコンジェニックマウス作製の開始を計画した。詳細および達成度については以下の通りである。1.腎疾患関連ゲノム領域の同定:QTL解析およびマイクロアレイ法という2つの手法を並行して実施することにより、効率的にゲノム領域を決定することを目指した。ICGNマウスおよびD2GNマウスを用いたQTL解析により腎疾患に関連する領域(LODscore4以上)が1、2、7、13、19番染色体に見つかった。さらにマイクロアレイ法により、正常およびICGNマウスの糸球体・腎皮質・腎髄質の発現遺伝子について比較解析を行った結果、自己免疫疾患関連遺伝子が多く変動していることがわかった。そこで自己抗体の有無をELISA法にて解析した結果、ICGNマウスは抗ssDNAおよび抗dsDNA抗体を産生していることが明らかとなった。このデータをQTL解析にフィードバックし、候補ゲノム領域の絞り込みを行い、自己免疫疾患、炎症に関与する遺伝子中心に解析を開始しており、当初の計画以上に進展している。2.新規腎疾患モデルマウス作製:モデルマウス作製を迅速に行うため、QTL解析実施中にすでにICGNマウスとB6マウスのF2マウスを準備した。そしてQTL解析の結果取得後、同定したゲノム領域を持つ5系統のコンジェニックマウス作製を開始し、現在4世代目を飼育しており、次年度には病態解析に使用可能であり、計画以上に進展している状況である。以上、本年度は2つの計画について計画以上に進展しており、次年度に更なる成果をあげられるよう尽力する。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度には、ネフローゼマウスを用いたQTL解析およびマイクロアレイ法により腎疾患関連ゲノム領域を同定した。最終目標の汎用性の高い腎疾患モデルマウス開発のため、(1)腎疾患関連ゲノム領域の同定および(2)そのゲノム領域を持つコンジェニックマウス作製を実施する。(1)腎疾患関連ゲノム領域の同定:H23年度に腎疾患関連ゲノム領域を同定したが、その中から疾患関連遺伝子を絞り込むことが今後の重要な課題となる。マイクロアレイ解析の結果、自己免疫疾患に関連する遺伝子が関与している可能性が高いことが判明したため、自己免疫疾患、炎症に関与する遺伝子を中心にシーケンス解析を行い、変異遺伝子を同定さらには腎疾患発症機序を明らかにする。(2)腎疾患関連ゲノム領域を持つコンジェニックマウス作製:H23年度に腎疾患関連ゲノム領域(1、2、7、13、19番染色体の関連領域)をもつ新規マウス系統のコンジェニック化を進めているが、今後もマウス作製を継続する。迅速化のため、マイクロサテライトマーカーを用いたスピードコンジェニック法を駆使し、6世代目の時点で表現型解析に供試する。汎用性の高いモデルマウスとして利用可能な系統となり得るか、血清生化学検査・病理解析・遺伝子発現解析により評価を行う。さらに作製した系統の中で、腎疾患を発症した系統については、導入したゲノム領域で特に腎疾患に関与する重要な領域を絞り込み、腎疾患関連遺伝子の同定および発症機序解明を目指す。(1)(2)を並行して実施することにより、迅速且つ効率的に研究を推進し、疾患・創薬研究に有用で汎用性の高い腎臓病モデルマウスを作製する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、腎疾患関連遺伝子の同定および新規腎疾患マウス作製・病態解析のために、以下の研究費を要する。・腎疾患関連遺伝子の同定のため、必要な消耗品の内訳として、DNA 抽出試薬、PCR 試薬、プライマー、アガロースゲル、シーケンス試薬などゲノム解析に必要な試薬が含まれる。新規に開発したマウス系統の病態解析のために必要な消耗品の内訳として、血清生化学解析試薬、ELISA試薬、ホルマリン、染色液、抗体など表現型解析に必要な試薬などが含まれる。・腎疾患関連遺伝子の同定のため、DNA マイクロアレイ受託解析(4アレイ分)の経費を計上した。・新規腎疾患マウス作製・病態解析のための動物飼育費は(独)医薬基盤研究所の動物実験管理運営委員会で定められた料金(1日あたり約50円/ケージ)を支払うため、使用予定ケージ数にかかる経費を計上した。・成果を学会で発表するための国内旅費として、日本実験動物学会、日本腎臓学会での発表を予定している。成果を論文発表するため、英文校閲費および別刷り印刷費を計上した。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] A potent inhibitor of SIK2, 3, 3', 7-trihydroxy-4'-methoxyflavon (4'-O-methylfisetin), promotes melanogenesis in B16F10 melanoma cells.2011
Author(s)
Kumagai A, Horike N, Satoh Y, Uebi T, Sasaki T, Itoh Y, Hirata Y, Uchio-Yamada K, Kitagawa K, Uesato S, Kawahara H, Takemori H, Nagaoka Y.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 6(10)
Pages: e26148
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Adult onset cardiac dilatation in a transgenic mouse line with Galβ1,3GalNAc α2,3-sialyltransferase II (ST3Gal-II) transgenes: a new model for dilated cardiomyopathy.2011
Author(s)
Suzuki O, Kanai T, Nishikawa T, Yamamoto Y, Noguchi A, Takimoto K, Koura M, Noguchi Y, Uchio-Yamada K, Tsuji S, Matsuda J.
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Journal Title
Proc Jpn Acad Ser B Phys Biol Sci
Volume: 87(8)
Pages: 550-562
DOI
Peer Reviewed
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