2011 Fiscal Year Research-status Report
熱流体解析による補助循環システムの血液適合性評価法の提案
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23700540
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
矢野 哲也 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (70404853)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 人工心臓 / 血液ポンプ / 血流 / 溶血 / 血栓 / 数値流体解析 |
Research Abstract |
心室内血流解析:血液ポンプの血液適合性は血流の状態に依存することが知られており、これまでポンプ内部の流れに注目した研究がなされている。植込型の補助人工心臓として使用される血液ポンプについては、周辺管路とともに心室内での血栓形成抑制についても考慮する必要があると考え、ここでは、補助人工心臓血液ポンプによる心拍出補助下での心室内血流動態を、数値流体解析及び流れの可視化実験の両手法により調べた。左心室内腔のモデルを計算機上に構築し、連続流ポンプによる完全拍出補助状態における心室内血流を数値解析した。また、このモデルと同一の内腔形状を有する透明シリコーン製流路(心室モデル)を作製し、これに心室モデル出口側(大動脈弁側)から挿入した脱血用カテーテルを通して遠心ポンプにより流体を汲み出し、タンクを介して心室モデル入口(僧房弁側)へと送液する循環回路を構築した。数値解析と同一の条件でポンプを駆動したときの心室モデル内の流速分布を粒子画像流速測定法により測定した。両者の比較から、数値解析結果の妥当性を確認した。壁せん断応力の分布より心室内の壁近傍流れを調べ、血流鬱滞箇所を明らかにした。また、カテーテル先端付近に複数設けられた側面孔による壁面洗い流し効果が確認された。赤血球変形挙動の解析:円錐平板間に赤血球を微量添加した高粘度溶液を挟み、円錐を回転させることにより、せん断流れを生成し、溶液中の赤血球に非生理的な高いせん断応力を負荷した。円錐回転速度の変化により、赤血球に非定常せん断応力を負荷し、変形、流動する赤血球を顕微鏡対物レンズを通して高速度ビデオカメラで撮影し、赤血球の変形挙動を解析した。非定常せん断流中での赤血球の変形過程から赤血球の粘弾特性を調べ、赤血球力学モデル及び損傷モデルの構築のために必要なデータを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)心室内血流解析:左心室内腔形状の計算機モデル及びシリコーン製流路を作製し、連続流ポンプによる完全拍出補助の状態での心室内の流動を数値的及び実験的に明らかにした。両者の比較から解析結果の妥当性を確認した。また、心室壁の運動を含む部分拍出補助状態を模擬した心室内血流を実施するための計算機モデルを構築し、壁運動のモデリングまで完了している。(2)赤血球変形挙動の解析:円錐平板型せん断負荷装置及び高速度顕微観察系を用い、赤血球の変形挙動を解析し、非定常せん断流中での赤血球の変形過程から赤血球の粘弾特性を調べた。赤血球の力学特性の温度依存性を調ためのせん断負荷装置の改修について、23年度は設計まで完了している。(1)において当初予定より若干の進展、(2)において若干の遅れが認められるが、全体としておおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初計画通りに研究を推進する。24年度は次の内容を実施する予定である。(1)心室内血流解析:補助循環の環境に則した条件の下での心室内血流の解析を実施する。すなわち、心室壁の運動を伴う部分拍出補助の下での数値解析を実行し、左室駆出率、ポンプ補助率による心室内血流の変化を調べる。(2)赤血球変形挙動の解析:微小流路通過中の赤血球を複数方向から顕微高速度観察し、その変形挙動を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
せん断負荷による赤血球損傷の温度依存性を調べるために、円錐平板型せん断負荷装置改修が必要となり、23年度中にその設計を完了したところである。装置製作を24年度に実施することとし、製作費として300千円を繰り越して使用したい。その他は、機械・電子部品、ガラス器具、薬品類等の消耗品費として250千円、成果報告及び研究打合せのための国内出張旅費に200千円、外部機関の実験機器使用料として50千円を用いたい。
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Research Products
(5 results)