2011 Fiscal Year Research-status Report
多様な検体の作用を生細胞を用いて測定するための微小流体デバイス
Project/Area Number |
23700543
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
二井 信行 東京電機大学, フロンティア共同研究センター, 助教 (10508378)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | マイクロ流体 / 動的再構成 / 封止剤 / ポリオレフィン / 浸透圧 / 粘度 |
Research Abstract |
離散化壁面の駆動による動的再構成可能な微小流体プラットフォームは,一般的な微小流体の動的再構成法と比較して,駆動できる対象が多いため,多様な検体に対応できるという利点がある.しかし,毛細管力によりピンの間隙を介して外部と液絡する問題(吸い出し)と,メニスカス力により,隣接するピンがつられて動く問題(重ね送り)がある.以上の問題を解決するために,重ね送りを防ぎつつ適切に液体をシールできる方法を検討した.1 加熱プローブと温度により粘度変化をもたらすピン間封止材の開発:マイクロマニピュレータに小型の発熱体と伝熱プローブを装着し,駆動対象のピンに適切な熱を加えられるような構造を完成させた.そして,温度制御器と粘度計を用いて,各種ポリオレフィンの組み合わせを検討し,プローブ末端の温度が50℃程度の比較的低い上昇で急峻かつ適度に粘度を変化させる組成を見出した.2 再構成可能微小流路の駆動性の評価:「重ね送り」の度合いを,実体顕微鏡下でピンを駆動しつつ動画撮影・解析して,「吸い出し」の度合いを,色素を混合したゲルと封止材をチップに導入したものを撮影・解析して検証した.結果,吸い出しと重ね送りの現象が生じないことを確認できた.段付きピンを実装する試みも行ったが,ピン間封止剤の特性が当初予想よりよく(粘度の過剰な低下を抑えられた),段付きピンの必要性はないと判断した.3 CO2インキュベーション対応の微小流体チップののプロトタイピング:透明樹脂の切削加工・研磨品とガラス基板を光硬化接着剤で接着し,ヘモサイトメータ類似かつ液体リザーバを搭載した構造を製作した.チップにピン・封止剤・浸透圧標準液を導入した状態でインキュベートし,液の浸透圧を測定した結果,少なくとも3日間の細胞培養に耐えうるを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
離散化壁面により微小流路を構築する実験を行うシステムの構築を完了させ,さらに,実用上な大きな問題点である吸い出しと重ね送りの解決にめどをつけることができたため.さらに,解決方法を発明として特許出願する準備も整えることができた.細胞培養を実際に行うことはまだできていないが,もっとも心配される要素である浸透圧上昇については,今後の培養実験が十分可能なレベルまで抑えられていることが確認できているため,この点においても,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
1 細胞培養に対応した再構成可能微小流体チップの試作と,小型のピン駆動系の改良:H23年度に製作した微小流体チップをベースに,培地の循環も可能とする,より長時間の培養に耐えうるチップ構造を検討し,試作・評価を行う.2 長期細胞培養による評価:1.で得られた微小流体チップが,細胞培養に適用できる環境を維持できるか検証する.COS-7細胞株など,単層を構成する細胞を導入し長期培養を試みる.また,細胞密度増加に応じて流路を拡張したとき,新たに流路内にできたスペースで,細胞の増殖や細胞間の結合に影響があるかを調べる.3 細胞や検体の導入の評価:動的再構成流路の利点を生かし,流路内でのゲルのパターニングと,気体の検体をゲルに誘導してゲルと気相との反応が容易に行えるかを検証する.(2と3は並行してすすめ,2と3のいずれかである程度の実験結果が得られた時点で,なるべく速やかに雑誌論文として投稿する)4 小型のピン駆動系の改良:現在用いている,卓上ではあるが大型の駆動系の運用結果をフィードバックさせ,ピン駆動装置の小型化をさらにおしすすめ,実用的な動的再構成のためのシステムを構築する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在は,カラー対応の高精細・高感度の顕微鏡カメラを所有していなかったため,ピン・気泡・封止剤・液体・ゲルの画像上での識別が,今後困難になると予想される.そのため,新規のカラーカメラの導入を行う.チップ部品の試作が必要になるが,スループットを挙げるため,小型の試作用加工機を導入する.その他,細胞導入・培養用の試薬・器具類や,試作用の材料費等にあてる.
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Research Products
(3 results)