2011 Fiscal Year Research-status Report
胚成長モデルのマルチセンシングシステムの確立と疾患モデルにおける臨床応用
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23700547
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Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
森谷 健二 函館工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (90342435)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ニワトリ胚 / 体動 / 低酸素 / 電磁波曝露 |
Research Abstract |
ニワトリ胚における低酸素状態における体動の解明 H23年度は15%O2の慢性低酸素環境におけるニワトリ胚の体動計測を行った.3日令までは通常環境による孵卵を行い,孵卵開始後72時間(3日令)から6日令まで低酸素環境下においての孵卵及び胚の撮影を行った.低酸素状態では正常胚で体動が起きはじめる時期においても体動が見られず数時間から数十時間遅れて起き始めていた.低酸素状態における体動の頻度と移動絶対量が少ない事が明らかになった.正常胚では胚の体動は1次元運動から徐々に2次元の円運動になり,さらに周期性を持ち始める事がわかっている.これに対し,低酸素状態では正常胚より遅れて2次元運動になるが,周期性を持った胚は無かった.この周期性の有無が,正常成長を判断する重要なパラメータになると考えられる.また,慢性状態の15%酸素環境では,低酸素に耐性のある初期胚においてもほとんどの胚が100時間以内に死亡することも明らかになった.ニワトリ胚における電磁波の影響 携帯電話の周波数帯において,ニワトリ胚の孵化率,成長率に影響がある事が明らかになったため,H23年度は孵卵のどの段階がもっとも影響を受けるのかについて調査を行った.ニワトリの孵卵日数21日を3つに分け,それぞれの期間において電磁波を1時間毎に5分間照射し,孵化率や成長率について調査した.その結果,統計的には孵卵14日令までに電磁波を照射した群において孵化率は有意に低くなり,孵卵開始1週間に電磁波を照射したグループの死亡率が高くなったことから各器官が形成された後に電磁波を照射するよりも形成初期に照射したほうが影響が出やすい事が示唆された.例えば低酸素環境への適応については孵卵初期の方が耐性があり,各器官が形成されてからの方が環境に適応できないと報告されていたが,電磁波の影響はその逆の結果が示唆された事になる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニワトリ胚における低酸素状態における体動の解明 目的を達成するためには第一に低酸素状態における体動データを得て,それにより今後の研究方針を決定する必要がある.そのためにH23年度は実験データの取得に徹底的に重点を置いた.まだ実験例数は必要だが,計測例数とその体動パターンの解析については順調である.実験を優先した結果,H23年度着手予定だった任意酸素濃度状態における計測システムの構築には着手していないが,これはデータが不足しているまま次のステップに進んでも結局再検討する事が目に見えており,意味がないからである.このことは研究計画の段階で想定している事なので,研究目的全体から見れば「おおむね順調」といえる.ニワトリ胚における電磁波の影響 本来,このテーマはH24年度に予定していたが,前項目がシステム構築より実験を優先したために,本テーマを前倒しして実施することが出来た.そのうえ,非常に有意義な結果を得られているので本目的に関しては「当初の計画以上に進展している」と判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
ニワトリ胚における低酸素状態における体動の解明 達成度の項目で述べたように,H23年度は慢性低酸素状態のデータ収集を優先した.したがって,本年度からは間歇性低酸素状態における体動の解析を目指すが,最初に計測システムを構築する.具体的には,任意の酸素濃度を3分以内(目標値は1分以内)に調整して,5-10分程度低酸素環境に暴露するシステムである.これは酸素濃度計のデジタル出力を受けて20%酸素と100%窒素の電磁弁開閉をPC制御する手法でアプローチする.このシステム構築により例えば「1時間のうち5分間だけ低酸素環境」を24時間繰り返す等のプログラムが可能となる.現在このような長期計測に対応できるような環境制御システムの開発報告はまだされていない.本年度,遅くとも来年度前半には正常胚,慢性低酸素,間歇性低酸素の各状態における体動データが得られるのでその比較により低酸素状態における特徴的な体動解析が期待できる.体動解析アルゴリズムの改良についても同時に行う.ニワトリ胚における電磁波の影響 引き続き,電磁波の影響を受けやすい孵卵期間の特定を行う.目標としては各200個体くらいのデータを考えている.また,吸収された電磁波は熱になるので,電磁波照射による胚の温度上昇についても知見を得る.これについては空間差分法(函館高専電気電子工学科,森田教授と連携)による数値シミュレーションとサーモグラフィによる実計測を行って考察を行う.特に脳や心臓など熱上昇がおきやすい器官や,成長上の影響を受けやすい器官があるかどうかについても調査していく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前項で述べた任意低酸素環境システムの作成のために酸素濃度アナライザー(40万)および電磁弁(30万)を購入し,電磁波の熱吸収に関する調査のためのサーモグラフィ(35万)を購入して「次年度使用額」がちょうど執行される. これに加えて当初の研究計画どおりにH24年度の実験も行うので,酸素および混合空気(約30万)や電子回路製作部品(約20万)と,学会発表および研究打ち合わせ旅費(25万計上),学会参加費等でH24年度申請額が執行されることになる. 実験計画が前後する可能性は研究計画から予想しており,研究結果や研究計画の変更によって「次年度使用額」が発生したわけではないのでテーマとしての達成度等には全く影響はない.
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Research Products
(5 results)