2012 Fiscal Year Annual Research Report
高次生体適合性を有する生体用β型チタン合金創出のためのプロセスデザイン
Project/Area Number |
23700553
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
仲井 正昭 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20431603)
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Keywords | チタン合金 / 強加工 / 耐食性 / 細胞毒性 |
Research Abstract |
生体用Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr合金(TNTZ)に高圧ねじり加工(HPT)を施すと、汎用塑性加工では認められない、エッチング溶液により腐食されない帯状の特異相が試料断面中央部に形成される。この特異相部は、エッチング溶液により腐食されないことから、優れた耐食性を有することが示唆される。チタン合金の耐食性は、その表面に形成される不動態皮膜の特性に強く依存する。したがって、特異相部の高耐食性は、母相部に比べて高い耐食性を有する不動態皮膜の形成に起因すると予想される。不動態皮膜の耐食性はその化学組成に依存すると考えられるが、さらに不動態皮膜の化学組成は基板の元素濃度分布の影響を受けると考えられる。そこで、電界放射型X線マイクロアナリシスを用いて、軽度のエッチング後の特異相部および母相部の元素濃度分布を測定した。その結果、母相部は特異相部に比べて、特にタンタル(Ta)の濃度分布に濃淡があることが判明した。このTaの濃度分布の濃淡は、元々の母相に存在するミクロ偏析やエッチング中の選択的溶解などの理由が考えられる。次に、照射面積を絞ることができるX線光電子分光により、試料断面内で測定位置を変えて不動態皮膜の化学組成を測定した。その結果、測定位置の違いによる不動態皮膜の化学組成に大きな違いは認められなかった。本測定の位置分解能を考慮すると、母相部におけるTaの濃度分布の濃淡を判別することは難しいと考えられることから、この結果は、平均的な不動態皮膜の化学組成が特異相部と母相部とでほぼ同じであることを示唆している。以上より、HPTを施したTNTZに形成される、エッチング溶液により腐食されない特異相では、平均組成としては母相部と同様の不動態皮膜が形成されるが、局所的には違いがあり、不動態皮膜中のTaの濃度分布の不均一性が母相部に比べて低いために高耐食性が得られると考えられる。
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Research Products
(15 results)