2011 Fiscal Year Research-status Report
酸性多糖で被覆したDNA複合体微粒子を内包した生分解性持続型遺伝子治療製剤の創製
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23700564
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
伊藤 智子 武蔵野大学, 薬学研究所, 特別研究員 (80372910)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / スローリリース |
Research Abstract |
難病の治療法として注目を集める遺伝子治療だが、外来遺伝子は短期間で失活してしまうため有効な治療は難しい。そのため効果が持続する徐放タイプの遺伝子導入製剤が強く望まれる。しかし、DNA複合体は一般に分散安定性が悪いため有効な徐放手段がなく、長期安定発現の可能な製剤の成功例や、放出制御の報告がなかった。一方我々は、ヒアルロン酸で表面を被覆したDNA複合体が極めて高い分散安定性を示すことを見出した。本研究では注射投与可能な生分解性自己会合型基材に酸性多糖被覆DNA複合体を内包することで注射型核酸徐放製剤を創製することを試みた。生分解性自己会合型基材としてアルギン酸ゲルを用いた。アルギン酸水溶液を生体内に注射投与すると生体内のカルシウムイオンによって投与部位でゲルが形成された。アルギン酸ゲルは酸性条件下で分解・溶解することが知られており、生体内で形成したゲルは、腫瘍組織中の低pH環境下で徐々に分解されることが期待される。そこでゲルの分解速度を制御するために、pHコントロール剤として非晶質リン酸カルシウム(ACP)をアルギン酸ゲルに添加した。ACPを含まないゲルは酸性下に置くと、1~2時間でゲル内のpHが低下し、数時間で崩壊・溶解した。一方、ACPを含有したアルギン酸ゲル内ではpHの低下がほとんど無く、ゲルは数日にわたって徐々に溶解した。これらのゲルにヒアルロン酸被覆DNA複合体を含有するとゲル内で分散し、ゲルの分解に応じてDNA複合体が放出された。同様に調製したDNA複合体含有アルギン酸ゲルをマウスの皮下に投与して、そのゲルの溶解挙動を評価したところ、ゲルは経時的に分解し、その分解速度はACPの含有量に依存した。これらの結果から、ヒアルロン酸被覆DNA複合体をアルギン酸ゲルに含有させることで、その条件によって、DNA複合体の放出速度を制御できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した研究実施計画に基づいて、高い発現効果を持つDNA複合体を徐放させる自己会合型デバイスを創製し、そのデバイスの分解速度およびDNAの放出速度を詳細に評価することで、23年度に達成するDNA複合体の放出速度の制御が可能な調製条件が確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
DNA複合体内包自己凝固型デバイスの安全性、毒性の検討及び発現効率を調べるとともに、免疫活性化遺伝子を用いて調製したDNA複合体内包自己凝固型デバイスによる治癒効果を評価する。結果を複合体調製やデバイス調製、さらにDNA複合体内包デバイスの調製条件に再びフィードバックし、システムの最適化を図り、臨床応用の可能な新しい遺伝子デリバリーシステムを構築する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスを用いて評価するため、小動物及びベクター用の試薬やレポーター遺伝子を購入する。また治癒効果を見るためには新たに治療用遺伝子をコードしたDNAも購入する。研究成果の発表、議論のため、国内外の学会への参加旅費および研究成果を発表する論文の別刷り代に使用する。
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Research Products
(8 results)