2011 Fiscal Year Research-status Report
ジスルフィド交換反応を用いた新規刺激応答性表面の調製と遺伝子導入への応用
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23700566
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋元 文 (水谷 文) 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10585805)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | リバーストランスフェクション / 遺伝子導入 / 刺激応答性表面 / コントロールドリリース |
Research Abstract |
本研究は、リバーストランスフェクション法の遺伝子導入効率の上昇を目指して、ジスルフィド交換反応によりDNA-カチオン性高分子複合体を培地中に放出する機能性表面の開発を目的としている。本年度は、ガラス表面へのカチオン性高分子の化学修飾および調製した表面の物性評価を行った。シランカップリング反応によりチオール基を導入したカバーガラス表面とピリジルジスルフィド基を導入したポリエチレンイミン(PEI)を反応させ、PEIを表面修飾した。調製したPEI-ガラス表面は、X線光電子分光(XPS)および表面ゼータ電位の測定結果より、ジスルフィド結合を介してPEIが修飾されていることを確認した。また、PEI-ガラス表面を0, 0.4, 1, 5 mmol/LのCys含有リン酸緩衝液(pH 7.4, 200 mmol/L)にそれぞれ25°C で24時間浸漬した後、表面ゼータ電位を測定すると、暴露していたCys濃度に応答して値が変化することがわかった。0-0.4 mmol/LのCys暴露の場合にはPEIがほとんどリリースされないため、シランカップリング反応処理のみの表面と比較して20 mV以上高い値を示したが、1-5 mmol/LとCys濃度が高くなるにしたがってPEIがリリースされてゼータ電位の値は0-0.4 mmol/LのCys暴露の場合よりも2-7 mV程度低くなる傾向が示された。この値の変化は、PEIに導入するピリジルジスルフィド基の量を変えることによっても制御することができた。以上より、低濃度のCys含有水溶液に浸漬することで、PEIをコントロールドリリースする機能性表面を調製できたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目標は、ジスルフィド交換反応によりカチオン性高分子をコントロールドリリースする機能性表面システムの作製であった。実際には、ジスルフィド結合を介したポリエチレンイミン(PEI)のカバーガラスへの表面修飾に成功し、さらに、調製した表面をシステイン含有水溶液に浸漬したところPEIがリリースすることを確認できたので、目標は達成できたと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、1. 機能性表面の合成、2. 機能性表面の物性評価、3. 機能性表面のリバーストランスフェクションへの応用、という3つのステップを踏んで完成するが、本年度は1.と2.を遂行した。次年度は、培養細胞を用いた3.の実験に進み、その結果を見ながら再度1.や2.の検討を行うことで、実用に耐えうる材料の調製を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、培養細胞を用いた実験をメインに行っていく予定である。そのため、主な研究費の用途は細胞培養・生化学実験に使用する試薬・物品費となる予定である。また、本年度と同様に本研究に関連する学会への参加・発表の費用としても使用する予定である。
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