2011 Fiscal Year Research-status Report
物理・免疫融合療法に用いるin situ癌免疫誘導のためのナノ構造アジュバント
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23700567
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
王 秀鵬 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究員 (70598789)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 癌ワクチン / 免疫補助療法 / アジュバント / リン酸カルシウム / シグナル物質 / 細胞毒性 |
Research Abstract |
本研究課題では、癌免疫療法に使用可能な、ナノ構造を有する無機粒子とシグナル分子を組み合わせた高免疫活性能を有するアジュバントの作製することが目的である。本年度は、ナノ構造を持つ無機粒子キャリアに免疫増強効果を示すシグナル分子を複合化させてアジュバントを調製し(Steps 1-3)、その安全性、有効性をin vitro評価(Step 4)で検討し、一部試料に関してはin vivo評価(Step 5)も開始した。キャリアとなる無機粒子としてリン酸三カルシウム(TCP)を選択し、二価陽イオン(マグネシウム、亜鉛)含有のTCP(Mg-TCP、Zn-TCP)を合成した。Mg-TCP、Zn-TCP粒子の流体力学半径は500~600nmであった。シグナル物質には菌体由来物質(BCG)を選択した。Mg-TCP、Zn-TCP粒子とBCGはリン酸カルシウム飽和溶液中で共沈現象によって複合化して、アジュバント候補材料とした。アジュバント候補材料はin vitro実験によって有効性のスクリーニングを行った。詳細には、癌免疫の活性化に重要な抗原提示細胞のモデルであるマクロファージ様細胞の培養系にアジュバント候補材料を添加し、40時間培養後に免疫活性の指標となる培養液中のサイトカイン量を定量した。Mg-TCP、Zn-TCPをキャリアとするとアジュバントのin vitro免疫活性が明瞭に高まった。特に、二価陽イオン(マグネシウム、亜鉛)含有量が1.5mol%のTCPを用いたアジュバントでは、添加量が1μg/mLで最もin vitro免疫活性が高まる事が分かった。これらのアジュバント候補材料は1-10μg/mLの濃度範囲であれば細胞毒性をほとんど示さず、本年度の手法で安全性を保持しつつ有効性を発揮させられるアジュバントが作製可能である事が示唆された。現在、同アジュバントのin vivo評価を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、所属する研究グループでも研究実績があるリン酸三カルシウムを無機粒子キャリアの原材料に選択したため、アジュバントに適したナノレベルの構造を有する粒子を調製する事が比較的速やかに行なえた(Step 1-a、2-a)。また、キャリアがリン酸カルシウムであるため、シグナル物質をリン酸カルシウム過飽和溶液中で複合化し、アジュバント候補材料とする事が容易であった(Step 3)。このため、本年度予定していた候補材料のin vitro評価(Step 4)を9月中に開始する事が出来た。現時点では、計画書で候補に挙げた原材料(キャリア、シグナル分子)の一部のみしか検討をしていないが、in vivo評価(Step 5)にも着手しており、得られたデータのフィードバックは、Step 4までのアジュバント候補材料の調製条件決定に有利であると考えられることから、当初の計画以上に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に開始したin vivo試験の結果を解析し、生体内での免疫獲得にアジュバント候補材料が有効に機能したか否かを評価する。その内容を元に、必要があればアジュバントの主構成要素である無機粒子キャリア及びシグナル分子の再選択を行なう。本年度はアジュバントの免疫活性を左右するパラメータとしてシグナル分子の担持量、シグナル分子担持条件、無機粒子キャリアの種類や構造等をさらに最適化すると共に、得られたアジュバントの安全性(低細胞毒性)の実現についても検討する。アジュバント候補材料は半年を目処に調製し、in vitro評価で有望と認められたものから順次in vivo評価実験を実施して、生体内での免疫活性効果が認められる材料の探索を行なう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品 60万円 :試薬(10万)、ELISAキット(20万)、理化学用品(10万)、実験動物(20万)等 役務 20万円 :英文校正(論文1報: 5-6万、Proceedings1報: 2-3万)等 その他20万円 :学会参加費(第9回世界バイオマテリアル学会、bioceramics24)等。
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