2011 Fiscal Year Research-status Report
体外補助循環における出血・血液凝固の非侵襲連続光診断法の確立
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23700575
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
迫田 大輔 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 研究機関研究員 (40588670)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 光計測 / 血液 / 可視・近赤外分光 / 循環器系疾患 / 血液透析 |
Research Abstract |
血液透析、人工心肺、左心室補助などの体外循環治療において、出血、血液凝固、血球破壊などが問題となっているが、これらを可視から近赤外光を用いて非採血的にかつ連続的にモニタリングする医用システムを確立することが目的である。 平成23年度は、体外循環回路中を流れる血液内の光伝播を直接解くことができる Photon-cell interactive Monte Carlo(pciMC) シミュレーションを開発した。開発したpciMCの精度を確認するため、新鮮ブタ血液を人工心肺回路で環流し、回路を流れる血液のヘマトクリット(HCT)を実際に非侵襲的に予測することを試みた。具体的には、回路チューブに波長633nmのHe-Neレーザーを照射し、血液透過光および反射光を受光した。一方で、pciMCシミュレーションを行い、受光結果と一致するときのHCTを出力した。結果として、採血式の測定結果と比較して、誤差1HCT%以下の精度で予測することに成功した。 血液の散乱は、血球細胞と血漿の屈折率の相対差によって起こる。したがって、血漿の個体差、または血球破壊(溶血)による血漿屈折率の変動によって散乱が変化する。このことから、血漿だけの光学特性を抽出し、血漿の非侵襲モニタリングおよび散乱補正を達成できる「血漿層境界反射分光法」を開発した。人工心肺回路にて新鮮ブタ血液を環流した。循環回路にガラス製フローセルを接続し、そのセル面に対して45°の角度でハロゲン白色光源(波長帯400~800nm)を入射し、セル壁層と血液層の境界で反射した光のみを光ファイバで取り込み、分光光度計に導いた。波長600nm以下のスペクトルは、HCTには依存せず、溶血にのみ依存した(相関係数=0.99)。得られたスペクトルから実際に血漿遊離ヘモグロビン濃度を予測した結果、22±19mg/dLの誤差精度で一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、平成23年度でpciMCによるヘマトクリットおよびヘモグロビンの非侵襲連続診断システムの確立を目的としていたが、これについては達成した。また、平成24年度の目標である全反射減衰分光法による血漿成分情報の抽出についても、その前駆体となる血漿層境界反射分光を開発し、実際に血漿だけに依存する吸収スペクトルが獲得できることに成功し、交付申請書の記載した研究計画以上の速度で研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画以上に研究は進展しているが、平成23年度の時点では、波長600nm以上の光を用いれば血漿だけのスペクトルを獲得できたが、波長600nm以下では、血球散乱光によるノイズが検出された。これは当初の交付申請書の通り、全反射分光を行うことで、血液透過光が除去されるため、問題解決になると考えられる。今後は、当初の計画通り、体外補助循環における全反射減衰分光を達成するとともに、平成23年度で開発した光伝播シミュレーションpciMCと組み合わせて、溶血が進行した血液においても、散乱を補正し、血液ヘマトクリットおよびヘモグロビンの高精度定量を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全反射減衰分光法を達成するための光学部品の購入、また開発装置の妥当性検証実験のための、動物血の購入、体外補助循環回路(塩化ビニルチューブ、リザーバーパック等)、実験用試薬(リン酸干渉生理食塩水、生理食塩水等)の購入を予定している。また、実験後の血漿遊離ヘモグロビン等の測定用試薬、血液分析試薬、検査外注依頼費などを予定している。 旅費については、国内および国際の人工臓器関連学会、および生体光学会関連の学会発表および情報収集を予定している。 その他、論文執筆、論集出版費等を予定している。
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Research Products
(6 results)