2011 Fiscal Year Research-status Report
乳房超音波画像診断におけるコンピュータ支援診断システムの開発と有用性の臨床評価
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23700578
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
中山 良平 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (20402688)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | computer-aided diagnosis / breast mass / histological / ultrasonographic image |
Research Abstract |
本研究の目的は,乳房超音波検査における腫瘤病変の鑑別診断を支援するコンピュータ支援診断(CADx: Computer-aided Diagnosis)システムの開発の基礎研究を行い,その臨床応用への可能性を検討することである.本年度は,医師が鑑別診断で着目している病変形態を形態的特徴量として定量化する手法を確立し,その形態的特徴量に基づいて,病理組織型の可能性を評価するアルゴリズムを構築した.また,画像診断において病理組織型の可能性を提示することの有用性を評価するための観察者実験を実施した. まず,病変形態(画像特徴)を定量化する手法の確立において,8画像特徴に対する医師の主観的印象の基礎データ(0.0~1.0)を得るために,3名の医師が参加した観察者実験(30症例)を実施した.そして各画像特徴において,主観的印象データの平均と定量化された形態的特徴量の相関が最も高くなる定量化手法を選択した.これまでに30腫瘤病変に対する8画像特徴において,相関値0.91~0.68が得られている.次に,8形態的特徴量を用いたArtificial Neural Networkにより,腫瘤病変を4病理組織型(浸潤がん,非浸潤がん,線維腺腫,嚢胞)に識別するアルゴリズムを構築した.390腫瘤病変を用いて,Leave-one-out testing methodに基づく評価実験を実施した結果,各病理組織型の正答率92.2%~78.8%が得られた.最後に,病理組織型の可能性を提示することの有用性を評価するために,7名の医師が参加した観察者実験(100症例)を実施した.その結果,病理組織型を提示する前の医師のReceiver Operating Characteristic (ROC)曲線下の面積平均0.714が,病理組織型の可能性を参照することにより0.889まで向上し,その有用性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究として,●医師が鑑別診断で着目している病変形態を形態的特徴量として定量化する手法の確立,●その形態的特徴量に基づいて,病理組織型の可能性を評価するアルゴリズムの構築,の2項目を計画していた.本年度はこれらの項目を予定通り進めるだけでなく,更に,画像診断において病理組織型の可能性を提示することの有用性を評価するため観察者実験を実施し,その有用性を示すことができた.したがって,「当初の予定以上に進展している」と評価できると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として,まず,類似画像を検索するアルゴリズムの構築に取り組む.そこで,医師の類似に関する主観的な印象の基礎データを得るために,大きさと形状に基づく層化無作為抽出法により選択された腫瘤病変を用いて,観察者実験を実施し医師に各ペアに対する主観的な類似の印象を0.0(全く異なる)~1.0(完全に同じ)の範囲で数値化(主観的類似度)を依頼する.次に,●形態的特徴量空間におけるユークリッドの距離に基づく客観的類似度,●2つの病変に対する医師の主観的類似度とそれらの形態的特徴量の関係を学ばせたArtificial Neural Networkの出力値に基づく心理物理的類似度,を組み合わせた類似画像検索アルゴリズムを構築する. そして,病理組織型の可能性の評価アルゴリズムと類似画像検索アルゴリズムを備えたCADxシステムのプロトタイプを本学附属病院の病院情報システムに繰り返し組み込みながら"CADxシステムの評価"と"CADxシステムの改良"を実施する.ここでは,CADxシステムの問題点の検証を重ね,ユーザニーズを繰り返しフィードバックすることにより,臨床で有用なCADxシステムを効率的に確立していく. 最後に,本学附属病院の病院情報システムにCADxシステムを組み込んだ臨床評価試験により,その有用性を評価する.ここでは,本学附属病院の複数名の乳腺外科医が参加し,以下の流れで評価試験を進める.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は主に,これまでの研究成果および今後の研究成果発表のための旅費,またシステムを開発するためのMatlabソフトの保守管理費として使用する計画である. 次年度6月に開催される国際学会参加費を前年度に支払う予定であったが,支払い手続きが間に合わなかったため,その参加費分を次年度に繰り越し,支払う予定である.
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