2011 Fiscal Year Research-status Report
熱凝固療法において正確・精密・焼灼中に凝固領域を把握するシステムの開発
Project/Area Number |
23700585
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小林 洋 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (50424817)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | ロボティクス / 生体熱工学 / 構造力学 / バイオメカ二クス / 制御システム |
Research Abstract |
近年 肝がんラジオ波焼灼療法(RFA療法)の使用率が増加する一方,超音波画像上で組織の凝固領域の確認が困難であるため,未焼灼に伴う癌再発や過剰な焼灼に伴う臓器損害などの問題が報告されている.そこで,本研究室の渡辺らがRFAにおける温度分布シミュレータを開発したが,温度と組織の凝固の関係を解明されていないため,組織が凝固に至る温度を提示できない.本研究ではRFA療法における組織の凝固領域提示システムの開発を目的とする.まず凝固領域を判定するには,治療中に凝固領域・非凝固領域の境界温度を判定する必要がある.本研究では肝臓を構造するタンパク質が熱変性に伴い,組織全体が硬くなる現象に着目し,硬さを示す弾性率が凝固の指標であるという仮説を立て,弾性率の境界温度により,組織の凝固境界温度を導出する. 研究手法として,温度と弾性率の近似式を導出し,弾性率が増加し始める温度を計算する.弾性率の境界温度を計算するために,昇温弾性率測定実験で温度と弾性率の近似式を導出し,弾性率が増加し始める温度を計算した.実験は粘弾性測定試験器にて人間の肝臓に近い正常なブタ肝臓から切り取った直径2[cm]の試験片を温度制御可能な水浴条件下で,昇温させながら弾性率を測定した.結果,温度と弾性率が温度範囲ごとに線形関数と非線形関数に近似でき,近似式と実測値の平均二乗誤差が最小となるような境界温度を算出した.計算結果は弾性率の境界温度が58℃である.この温度は文献から得られたタンパク質の熱変性温度(50~60℃)に近い値となり,弾性率が組織凝固指標として有用であることを示した.温度ごとの組織の状態を確認するために,温度ごとの試料の組織観察を行い,組織状態を比較した.結果,実験で使用した試料に細胞の代謝がないため,温度ごとの組織に違いを確認できなかった.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
予定していた「肝臓組織における温度と弾性率の近似式を導出」を実施し,加えて,組織観察における検討も実施したため.
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画通り以下の項目に関して研究を推進していく.(1)変形シミュレータを規範とした硬さ分布測定により凝固領域を把握する手法の開発(2)高精度穿刺支援システムとの統合と動物臨床による評価
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定通り使用していく.すでに開発済みの穿刺支援ロボットとの統合,また九州大学病院でのシステム評価を重点的に行う.研究経費の使用はこの計画に合致した妥当なものであると考える.本研究は実際の物理シミュレータの開発及びその評価が目的であり,物理シミュレータ開発のためにワークステーション,評価実験を行なう機器製作のために加工品費,要素部品費等が必要である.九州大学やとの連携して研究を行うため,また,国内・国際学会での発表・調査のため,旅費の配分を増やしている.
|