2011 Fiscal Year Research-status Report
脳血管疾患診断支援のための仮想血管操作システムの開発
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23700587
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
篠原 寿広 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (20434863)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 画像診断システム / 脳血管疾患診断支援 / 仮想血管操作 / 3次元ポインティングデバイス / 血管モデル |
Research Abstract |
本研究は脳血管疾患診断支援システムの構築を目標とし、当該研究は頭部CTA画像における脳血管に仮想的に触れ、操作することのできるシステムを構築することを目的とする。本目的を達成するため、「仮想空間内の血管を操作するためのユーザインターフェースの研究・開発」および「仮想空間内における血管形状および振舞いのモデリング」を行う。研究計画にしたがい、当該年度は、前者のユーザインターフェースの研究・開発を行った。 本システムは、パソコン、立体映像対応モニタ、Webカメラ、血管操作のためのユーザインターフェースとなるマーカ付きスティック、仮想空間の基準座標を定義する四角形のマーカからなり、極めて簡便で安価な構成である。 当該年度にて、本システムを構築し、血管操作のためのスティックに付けられたマーカをWebカメラにて認識し、実空間におけるスティックと同じ動作をするポインターを仮想空間内に表現することができた。当初、血管操作のためのスティックに付けられたマーカとして、球状物体を考えていたが、仮想空間の基準座標定義用マーカと同様の四角形マーカを採用した。本成果を第30回日本医用画像工学会大会にて発表した。四角形マーカを用いることにより、仮想空間の基準座標定義用マーカの認識と同じ認識手法を採用することができる。本インターフェースは、2次元ポインティングデバイスであるマウスにとって代わる3次元ポインティングデバイスであり、仮想的に血管を操作するために重要な役割を果たす。 また、血管モデルを作成する際に必要となる血管の位置および径の推定について、推定精度を評価し、血管の位置および径をよく推定できていることを確認した。本成果は電子情報通信学会医用画像研究会(1月)にて発表した。血管の位置および径情報は血管モデルの形状の再現精度にかかわるため、これらの推定精度を評価することは重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にしたがい、「仮想空間内の血管を操作するためのユーザインターフェースの研究・開発」を行い、実際に当該システムを構築し、血管操作のためのスティックに付けられたマーカをWebカメラにて認識し、実空間上のスティックと同じ動作をするポインターを仮想空間内に表現できることを確認した。ただし、スティックに付けられたマーカおよび基準座標定義用マーカの位置および姿勢の推定精度については今後検討する予定である。 また、1台のWebカメラを用いる手法がうまくいかない場合に備え、2台のWebカメラを用いたスティックの位置および姿勢の推定も行った。1台のカメラのみを用いる場合と異なり、スティックの位置および姿勢を認識するためのマーカを用いずに血管操作用スティックの位置および姿勢を推定できることを確認している。 さらに、次年度に着手する予定である「仮想空間内における血管形状および振舞いのモデリング」についても、脳血管を模した簡単なデータを用意し、基礎的な検討をすでに始めている。 以上より、当該研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にしたがい「仮想空間内における血管形状および振舞いのモデリング」を行う予定である。血管の形状モデリングについては、血管の表面のみをモデル化するサーフェイスモデルを採用する。血管の位置および径情報の推定精度がよいことから、血管形状も精度よく再現されることが期待されるが、血管形状がサーフェイスモデルによって精度よく再現されない場合に備え、頭部CTA画像をそのまま用いるボリュームモデルについても検討する。現在は、頭部CTA画像から自動的に血管のみを精度よく抽出することができないため、手作業により血管の抽出を行うが、推定された血管の位置および径情報を利用し、画像処理による自動血管抽出も検討する。 当該研究において、脳血管の位置情報とは血管心線の点列の位置情報に相当する。血管の振舞いモデリングについて、血管の中心点を質点とみなし、質点同士をバネで連結した「バネ質点モデル」を採用する。上述のとおり、すでに基礎的な検討は行っている。バネ質点モデルは血管が伸縮するモデルとなるため、場合によっては血管の直感的な仮想操作の妨げとなることが考えられる。そこで、さらに研究計画にはないが血管の中心点をノードとみなし、ノード同士をリンクで連結した「リンクモデル」についても検討を行う。 さまざまな形状の脳血管に対して、これらのモデルの血管の振舞いを比較、検討し、改善していく予定である。さらに、当該年度に開発した仮想空間内の血管を操作するためのユーザインターフェースシステムと組み合わせ、実際の操作性について検討する。協力関係にある同県内の医科大学の先生にも意見をうかがい、当該システムを改善していく予定である。 年度末には、本研究助成により得られた結果や今後の課題について最終的な考察を行い、成果を国内外の医用画像工学分野の学会で発表するとともに、国内外の同分野の研究論文誌に論文を投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
提案する血管の振舞いモデルにしたがい、血管操作用デバイスによって触られた血管をリアルタイムに動かす必要があるが、遅延なく描画できる処理能力を有する定評のあるグラフィックボードを早期に購入する。 開発したシステムの操作性等の評価を目的に、協力関係にある同県内の医科大学の先生と意見交換を行うため、2回程度の出張旅費が必要である。また、成果の発表を行う上で学会参加費、旅費および論文別刷り代が必要である。 当該年度の残額は214円であるが、助成金を預けている銀行の解約手続きを行っていないため、研究費残額が少額の場合に限り許される他の使途制限のない経費と合わせて物品を購入することができず、過不足なく助成金を使用することが困難であった。本残額は少額であるため、次年度の上記研究経費のいずれかに充当する予定である。
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