2011 Fiscal Year Research-status Report
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23700598
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
李 佐知子 名古屋大学, 医学部, 助教 (80599316)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Spasticity / Cortical injury / Hoffman reflex / KCC2 / serotonin |
Research Abstract |
申請時の本研究目的は、脳血管障害後に生じる筋緊張亢進の発症機構について、まず(1)大脳皮質損傷後の痙縮の経時測定は、現時点で大脳皮質損傷痙縮発症動物モデルが確立し、実施が完了している。一般的に痙縮評価に用いられているHoffman反射のRate Dependent Depression (RDD)を経時的に測定している。一側大脳皮質損傷を起こしてから、3日、1、2、3、4、6そして8週間後に両側の小指外転筋のRDDを測定した結果、損傷後3日目から損傷反対側(affect側)にRDDの有意な弱化がみられ、その現象は損傷後6週間後まで観察される。しかし損傷後8週間が経過するとaffect側のRDDはSham群やnon-affect側との比較で有意な差は見られなった。この結果は、霊長類の先行研究と類似する結果である。次に(2)大脳皮質損傷後の痙縮発症に関与する分子の発現変化の解析についても、発現が減少することで脊髄運動神経細胞を興奮させるKCC2や脊髄運動神経細胞を興奮させるセロトニンの発現変化を脊髄レベルにおいて確認している。KCC2は脊髄運動神経細胞膜上の発現変化を、免疫組織染色法において半定量的に解析した結果、大脳皮質損傷3週間後に有意な低下を確認した。現在、western blotting法やreal time RT-PCR法などにおいて定量的測定を実施している。またセロトニンに関しても、脊髄レベルにおいて、セロトニン陽性線維がSham群と比較して有意に増加していた。今後痙縮とセロトニンの発現に関する相関を確認するために、経時的観察を実施している。(3)関連分子と痙縮出現の関連証明については、実験(2)の結果をもとにloss of function及びgain of functionを実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の達成度は、実験(1)大脳皮質損傷後の痙縮の経時測定に関しては、早期に大脳皮質損傷痙縮発症動物モデルが確立したことから、予想以上に推進し測定を行えおえた。さらに(2)大脳皮質損傷後の痙縮発症に関与する分子の発現変化の解析について現在も解析中であるが、発現が減少することで脊髄運動神経細胞を興奮させるKCC2の有意な発現減少や脊髄運動神経細胞を興奮させるセロトニン陽性神経線維の有意な発現増加が脊髄レベルで観察されたことから、この実験においても平成23年度の達成度は満たしている。実験(3)関連分子と痙縮出現の関連証明については、実験(2)の結果をもとに実施予定であるので計画通りの進み具合である。また実験(4)リハビリテーションをふまえた痙縮出現の変化と関連因子の変化については、実験(3)と平行して実施が可能であるので今後強く推進する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究に関しては実験(2)の解析を進め、実験(3)および実験(4)を速やかに実施することに注力する。実験(3)のKCC2に関しては、直接KCC2遺伝子の過剰発現系を使用するなどを検討している。ただし過剰発現系がうまく作用しない場合には、KCC2発現減少による運動神経細胞の過剰興奮の作用点であるGABAA受容体に対して、そのアンタゴニストの投与によってKCC2発現減少効果をキャンセルする系なども検討している。一方セロトニンについては、セロトニンの発現抑制および過剰発現系で検討する予定である。セロトニンはトリプトファンを材料として、トリプトファン水酸化酵素(TPH)を律速酵素として合成されることから、TPHの不可逆的阻害剤であるp-クロロフェニルアラニンの投与により長期的なセロトニン枯渇状態が作成できる。さらにトリプトファンの経口投与によってセロトニンの発現量が増すことから、セロトニンと痙縮との関係をこれらの系を用いて検討する。さらにマウスセロトニン陽性縫線核脊髄路線維は脊髄後外側路を下行することから、直接この脊髄下降路を切断することも検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物モデルの検証として、behaviorによる解析を検討しており、3次元解析ソフトの導入を計画している。さらに、western blottingおよびreal time RT-PCRなどの実験機器および試薬購入を検討している。
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Research Products
(1 results)