2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23700598
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
李 佐知子 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80599316)
|
Keywords | 理学療法学 / 痙縮 / 脳卒中 |
Research Abstract |
脳卒中痙縮研究は、ヒト脳卒中患者を用いた電気生理学的研究が行われた報告があるのみで、動物モデルがないことから病態機序の解明が遅れていた。本研究では、新たな脳卒中後痙縮発症マウスを作成することを目的とした。 損傷領域は先行研究を参考に、マウス上肢補足運動野および運動野に脳虚血を作成した。Hoffman (H)反射のrate-dependent depression (RDD)を用いて痙縮測定を試みた。RDDは一般的に痙縮測定に使用され、刺激頻度依存的に減弱するH反射が痙縮出現によりその減弱が弱化されることで評価する。本研究では痙縮により機能回復が遅れる小指外転筋を対象とした。本研究で、以下のことが明らかになった。①大脳皮質損傷後、H反射RDDが弱化(痙縮出現の確認)、②経時的H反射RDDの測定から、脳卒中3日~8週間後までRDDが弱化、③小指外転筋を支配している運動神経細胞はc-fosが発現増加し、運動神経細胞の興奮性が増大していた、④Boulenguezらが報告した脊髄損傷後の痙縮出現に関与するK+-Cl-共輸送体2 (KCC2) は、本モデルにおいても運動神経細胞膜上で発現が有意に減少。 以上より、補足運動野および運動野の損傷が支配領域の運動神経細胞の興奮性を高め、反射亢進が生じていることが確認できた。alpha運動神経細胞の興奮性増大はヒト脳卒中後にも報告されており(Higashi et al. Arch Phys Med Rehabil. 2001)、本モデルが臨床痙縮モデルとなり得るものと推測した。 本研究は、マウス大脳皮質上肢運動領域損傷後、Hoffman反射の刺激頻度依存性反射強度弱化の抑制および、脊髄運動神経細胞の活動性亢進を確認できたことから、脳卒中マウスで痙縮発症を確認した初めての研究である。
|
Research Products
(4 results)