2011 Fiscal Year Research-status Report
心不全に伴う骨格筋萎縮に対するインプラント型治療的電気刺激の予防効果
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23700600
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
藤田 直人 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (90584178)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 心不全 / 骨格筋 / 萎縮 / 電機刺激 |
Research Abstract |
【内容】研究目的は,心不全に伴う骨格筋の萎縮予防に対するインプラント型治療的電気刺激装置の開発およびその効果及び作用機序の検証である.具体的な内容は以下のように細分化して実施した.1)心不全モデル動物の作製:ラットにモノクロタリンを投与することで肺高血圧症を惹起し,その後右心不全が生じた際に骨格筋が萎縮することは確認済みであり,現在は骨格筋ごとの特異性を検証中である.2)骨格筋萎縮に対する治療的電気刺激の効果検証:経皮的な治療的電気刺激が筋萎縮の予防に有効であることは確認済みであり,より有効な電機刺激のプロトコルを検証中である.3)インプラント型電気刺激装置の開発:3×4cmに小型化したものが完成しており,更なる小型化を試みている最中である.【意義】骨格筋の萎縮を予防する手段として歩行やスクワットの様な全身性の運動があるが,心不全患者は運動耐用能が低下しているため,積極的な運動を実施することが困難である.よって,治療的電気刺激の様な局所的かつ他動的に骨格筋をトレーニングできる介入方法は,心不全患者の低下した運動耐容能を考慮した場合,有用であると思われる.【重要性】心不全患者は,心拍出量の低下による骨格筋への血流量減少により,運動耐容能が著しく低下している.また,心不全によって誘発される炎症性メディエーターによって骨格筋は萎縮し,この骨格筋萎縮による身体活動量の減少は更なる骨格筋の廃用性萎縮を引き起こし,運動耐容能の低下を助長するという悪循環が生じている.心不全によって誘発される骨格筋萎縮の回復は,薬剤や外科的治療によって心拍出量を増加させてもすぐに得られないことが確認されている.すなわち,心不全患者に対する骨格筋萎縮の予防手段の開発は,心臓血管外科術後等における機能回復の促進につながると考えられ,リハビリテーション分野における重要課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心不全モデル動物の作製,および骨格筋萎縮に対する治療的電気刺激の効果検証については順調に進展している,モノクロタリンを用いた右心不全モデル動物における骨格筋の萎縮は確認済みである.しかし,研究の過程において,萎縮しやすい骨格筋と萎縮し難い骨格筋が存在する可能性が判明したため,現在は骨格筋ごとの特異性を検証中である.萎縮に対する骨格筋の感受性を明らかにすることで,病期にあわせたターゲットを明確にすることを検討している.経皮的な治療的電気刺激が筋萎縮の予防に有効であることは確認済みであり,現在はより有効な電機刺激のプロトコルを検証中である.通常の経皮的な電気刺激では筋萎縮予防効果が十分に得られない場合でも,刺激周波数を変更することや刺激時の骨格筋の収縮様式を変更することで,その効果が増大できることが明らかになった.インプラント型電気刺激装置の開発に関しては,当初の計画よりもやや遅れていると思われる.これまでに3×4cmの刺激装置が完成しているが,生体内に留置するとなると更なる小型化が必要である.しかし,小型化すればするほど刺激出力が低下してしまい,バッテリーの寿命も短縮してしまう.現在は長期間留置可能(バッテリーを交換する必要がないもの)かつ骨格筋を収縮できる程度の出力を要した装置の開発およびその小型化を試みている最中である.
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Strategy for Future Research Activity |
心不全モデル動物における骨格筋の萎縮に関しては,骨格筋ごとの特異性を検証していく予定である.アポトーシスや萎縮が生じやすい骨格筋の選別,および病期による違いを検証することで,ターゲットにすべきものの優先順位を明確にしたいと考えている.治療的電気刺激の筋萎縮に対する予防効果の検証に関しては,より有効な電気刺激プロトコルを検証していく予定である.通常の電気刺激だけでは筋萎縮の抑制効果が十分でない場合,電気刺激治療と併用して行えるプラスアルファな介入が要求される.これまでに,低周波を用いた刺激よりも,中周波を干渉させることで得られた低周波刺激の方がより深層の骨格筋にまで刺激可能であること,電気刺激で骨格筋に等張性収縮を誘発するよりも,等尺性収縮を誘発した方が萎縮予防効果が高いこと等が明らかになった.今後も電気刺激の効果を増強するような併用できる介入を検討していく予定である.インプラント型電気刺激装置の開発に関しては,長期においてバッテリーを交換する必要がなく,骨格筋を収縮できる出力を要した装置の開発が要求される.バッテリーに関しては,ワイヤレスで充電可能な充電池の利用を計画している.刺激出力に関しては,骨格筋を収縮できる必要最小限にまで出力をおさえることで刺激装置を小型化することを計画している.また,電気刺激と併用可能な介入を加えることで,刺激出力の低下をフォローできるのではないかと考えている.十分な小型化が可能になれば心不全モデル動物の生体内に刺激装置を留置し,その効果を検証することを計画している.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で使用する大部分の実験装置や測定機器は既に設置してあるため,抗体や試薬など,実験消耗品が研究経費の主である.心不全モデル動物の作製およびその骨格筋の萎縮を検証するために,様々な実験消耗品が必要になる.モデル動物の作製に必要な動物,餌や床敷きなどの消耗品の他,組織学的,生化学的,分子生物学的な検索に必要である試薬や抗体,ピペットチップやスライドガラスの様なディスポ類の購入を計画している.また,インプラント型電気刺激装置の開発に必要な関連部品の購入も計画している.加えて,国内及び海外の公開行事での報告と学術雑誌への投稿に研究費を使用することも計画している.得られた研究結果を公開することで情報を共有化し,研究成果の有効活用および研究の更なる発展に役立てたいと考えている.
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Research Products
(17 results)