2011 Fiscal Year Research-status Report
調音状態をフィードバックする発話訓練システムの開発
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23700606
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
坂田 聡 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (80336205)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 逆フィルタ制御(IFC)法 / 構音状態 / 可視化 / 話者正規化 |
Research Abstract |
本研究は,音声発話における調音状態と音声信号から観測される音響パラメータであるホルマント周波数の関係を明らかにし,発話訓練システムへの応用を目的としている.発話訓練が学校のパソコンルーム等の実環境で実施されることを考慮し,ホルマント周波数の推定は,安定かつ高精度に行えることが望ましい.このホルマント周波数の抽出には,さきに我々が提案した逆フィルタ制御(IFC)法を用いることを前提としているため,他のホルマント推定方式との比較するため,モンテカルロ法による合成音声を用いた実験を行った.結果として,スペクトル情報を利用する推定方式と比較し,零交差情報を利用するIFC法は様々な条件において推定誤差が小さく安定な推定が行われることが示された.次に,構音を制限した状態で発話する「拘束発話音声」を録音し,IFC法により推定したホルマント周波数がどのように変化するかを検討した.ホルマント周波数空間において構音状態を推定する場合,話者の性別や年齢層によりホルマントの分布空間が変化するため,個人性を正規化する新たなパラメータ(h,v)を定義し,音声の知覚・認識に重要である母音のホルマントがhv座標系においてどのように表現されるのかを検討した.通常音声を用いた検討において,日本語五母音の個人性が正規化され,hv座標系において母音の区別化が容易になること,母音の調音において,hパラメータは舌の前後位置,vパラメータが舌・顎の高低(開き)と相関が有ることが示された.拘束発話音声を用いた検討においても,構音状態の推定にhvパラメータが有効であることが示されたが,話者によっては構音状態が制限された状態においても音声に変化がない(ホルマント周波数が変化しない)場合もあったため,新たなパラメータの導入についても検討したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
音声の構音状態とホルマント周波数の関係をあきらかにするため,ホルマント周波数から算出される新たなパラメータ(h,v)を定義し,通常発話音声と拘束発話音声において,それらパラーメータが舌の位置や顎の開き(高低)と相関があることが示された.話者による変動があるものの,これらのパラメータを話者にフィードバックするようなソフトウェアを開発することで,本研究の目的である発話訓練システムの制作が可能になると考えられるため.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において定義したhvパラメータによる構音状態の表現手法には個人差があり,話者によってはこれらのパラメータだけでは構音状態を表現できない可能性が示唆された.したがって,ホルマント周波数や他の音響パラメータを総合的に利用するニューラルネットのような手法を適用することで,個人差の影響を低減して発話訓練が行えるような手法を検討する必要がある.したがって,次年度の研究において,hvパラメータを用いた発話訓練システムを構築する際に,パラメータの変化に柔軟に対応できるシステムの構築する必要がある.次に,制作した訓練システムを用い,構音障害者や,日本語を学習する外国人の話者等で実験を行い,本システムの有効性を検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
訓練システムの構築用PC及びソフトウェア,訓練システムの実験環境の構築(オーディオインターフェース,マイク,ヘッドホン等),訓練車への謝金が必要となる.
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Research Products
(6 results)