2011 Fiscal Year Research-status Report
触覚と3次元仮想空間を利用した運動学習における視覚と運動感覚の役割の解明
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23700608
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
塗木 淳夫 鹿児島大学, 理工学研究科, 助教 (50336319)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 触覚力覚デバイス / バーチャルリアリティ / 運動記憶 / 物体把持 / 経頭蓋的磁気刺激 / 国際情報交流 / イギリス |
Research Abstract |
本研究は、運動学習の違いによって、運動予測の記憶が脳のどの部位に収納されているかについて、脳活動を混乱させる非侵襲性手技である経頭蓋磁気刺激法(TMS)、触覚提示ロボット、バーチャル3次元空間を利用して明らかにするものである。 当該年度は、触覚と3次元仮想空間を利用した運動学習における視覚と運動感覚の役割の解明を行うために、触覚提示ロボットとバーチャル3次元空間を用いた把持運動実験システムの構築を行った。このシステムによって、被験者が握って持ち上げる物体の形・大きさ・重さなどを任意で変更することが可能となり、被験者の握る強さや持ち上げる3次元情報を正確に計測する事が出来るようになった。同様に、外部の計測装置(筋電図)や刺激装置(磁気刺激装置)との時間同期も可能となった。触覚提示ロボットを用いた3次元バーチャル空間においての把持運動が実環境と同じように実行されるという事を確認できた上で、視覚的運動予測と触覚的運動予測の運動記憶の役割について実験を行った。これまでの研究において、物体を持ち上げるための運動予測は、物体の視覚的な情報と以前の運動記憶によって実施されるという事が定説であった。しかしながら、連続する把持運動において1つ前の物体の物理情報がそれまでの大きさ(視覚情報)と重さ(触覚情報)の関係において矛盾が生じた場合には、次の物体を持ち上げるための運動予測は、物体の視覚的な情報だけでなく、1つ前の触覚情報が大きな影響を及ぼすという事が明らかとなった。これは、従来の定説(視覚的運動予測の優位性)に対して、触覚情報を用いた運動予測の重要性を明らかにするものであり、運動学習や運動機能回復などのメカニズムを考える上で非常に重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、バーチャル3次元空間も含めた実験システムの作成は次年度に完成する予定であったが、初年度においてシステムの完成と評価を行う事が出来た。また、同様に次年度に行う予定であった実験の一部も完了し、重要な研究成果が見られたために、当初の計画以上に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度に作成したバーチャル3次元空間(3Dステレオ表示器)提示実験システムを用いて、3次元空間上の物体と視覚情報が矛盾した視覚的歪みを生じさせ、その場合の視覚的運動予測と触覚的運動予測に基づく運動学習が脳内においてどのようになっているかについて、経頭蓋磁気刺激法を用いて明確にしていく予定である。特に、運動命令の最終出力である運動皮質や視覚的運動予測に基づく一時的な運動記憶の部位に関与していると予想される後頭頂葉皮質について検討を行う予定である。また、学会発表、論文発表を通して研究成果の社会発信に努めるとともに、国内外からの助言や研究動向を踏まえ研究を柔軟に推進していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、学会発表、論文発表を通して研究成果の国内外の社会発信に努めるための旅費(40万程度)、データ等の保存や実験システムの改善等に対する物品費(消耗品:10万程度)に使用し、また、論文作成を行う上での助言に対しての謝金に使用する予定である(20万程度)。
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