2011 Fiscal Year Research-status Report
動脈スティフネスと運動時脳血流との関係―脳循環を考慮したリスク管理基準の作成―
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23700637
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
椿 淳裕 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 講師 (50410262)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 近赤外分光法 / 自転車エルゴメータ駆動 / 酸素化ヘモグロビン量 / 動脈スティフネス |
Research Abstract |
脳血管疾患の発症後間もない時期のリハビリテーションにおいて,運動療法のリスク管理を行う上で,運動によって脳循環がどのように変化するかは十分に理解しておく必要がある.h平成23年度における本研究の目的は,早期リハビリテーションにおける脳循環からのリスク管理指標を作成するための基礎的研究として,動脈スティフネスがベッド上での下肢自転車エルゴメータ運動時の脳血流および脳血流配分比にどう影響するのかを明らかにすることである. 動脈スティフネスの指標である動脈脈波伝播速度は,正常範囲内の617.4±24.8cm/sであった.自転車エルゴメータによる漸増運動負荷試験によって最大酸素摂取量(VO2max)を求め,一回拍出量がプラトーとなる中強度のVO2maxの50%(50%VO2max),低強度30%VO2max,高強度70%VO2maxの3種類の負荷量で自転車エルゴメータ駆動を実施した.自転車エルゴメータ駆動中の脳血流の指標として,近赤外分光法による酸素化ヘモグロビン量(O2Hb)を測定した.自転車エルゴメータ駆動時のO2Hbの変化は,ウォーミングアップ中に上昇した.30%VO2maxおよび50%VO2maxの3分までその状態が保たれ, 50%VO2maxの4分以降では,さらに上昇した.70%VO2maxでは開始後2分まで上昇したものの,その後70%VO2maxの3分以降徐々に低下し,70%VO2maxの5分時点で安静時のレベルまで低下した. 一般に,安静時に比べO2Hbが増加した場合,増加した部位の大脳皮質に活動があったと解釈される. 70%VO2 maxで3分以降にO2Hbが低下したことは,課題運動自体は実施できていても,大脳皮質の血流は低下している可能性があると考えられるものの,これを説明する十分な根拠に乏しい.今後,座位の角度を変化させた時の反応を測定していく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付決定額の全額交付を待って本格的な研究を実施したため,若干の遅れを生じたものの,動脈スティフネスの測定開始は順調であった.また,漸増運動負荷試験の実施も順調に実施できた.その後,30%VO2max,50%VO2max,70%VO2maxの3種類の負荷量で自転車エルゴメータ駆動を実施したが,運動中の酸素化ヘモグロビン量の測定と酸素摂取量および二酸化炭素排泄量の安定した計測に時間を要した.これについては,測定環境を整理することで対処できた.さらに,臥位での測定に必要なヘッドレストの完成が遅れたことも進行の遅れの原因として挙げられる. 通常,近赤外分光法による脳血流測定では3cm間隔のプローブを使用するが,これで測定された結果には頭皮血流の影響が含まれる可能性があるとの指摘がある.このため,脳血流のみを測定する方法として,プローブ間距離を2種類とし,近赤外光の光路長を利用して脳血流のみを測定する方法を導入した.この方法によっても,通常の測定と等しく,安定して測定することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の遅れの原因の一つとして挙げたヘッドレストは,平成24年度早々に完成予定である.このヘッドレストを使用することで,脳血流測定のためのプローブを固定するホルダーを装着したまま座位角度を変化させることができる.これが完成すれば,順次測定を進めていくことができ,当初の予定である座位の角度を変化させた時の運動強度と脳血流との関係について明らかにし,動脈スティフネスを考慮したリスク管理基準の作成へと,研究を進めていく.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究進行の若干の遅れから,被験者数が予定を下回った.この分を次年度実施することとして予定をしている.また,当初予定していた研究成果の発表が実施できなかったため,これを次年度に実施する予定である.また,ヘッドレストが次年度完成予定であるため,この費用を次年度に執行する. その他の消耗品等については,当初計画に基づいて使用していくことを予定している.
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