2011 Fiscal Year Research-status Report
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23700656
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Research Institution | Kyushu University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
大森 史隆 九州保健福祉大学, 保健科学部, 助手 (70551307)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 痴呆 / 聴覚障害 / 評価 / リハビリテーション / 言語聴覚士 |
Research Abstract |
2011年度は、「聴覚障害を持つ認知症者用のMMSE(以下、MMSE for HL(仮称))」作成に向けた基礎的資料を得るために、1)アルツハイマー病(以下、AD)患者の聴覚障害の様相に関する調査、2)AD患者の聴覚障害がMMSEに及ぼす影響の横断・縦断的調査、3)MMSE教示文を音声呈示する代わりに文字呈示するwritten MMSE-Jの調査、分析を実施し、以下の知見が得られた。1)AD患者の聴覚障害罹患率は96.1%と高齢者に比し高いこと、オージオグラム聴力型は、高音障害漸傾型61.0%、高音障害急墜型20.7%、不定型8.5%、混合型6.1%と高音漸傾型に続く聴力型の順序と割合が高齢者とは異なること、2)聴覚障害を持つAD患者はMMSE遅延再生項目が低下すること(聴覚障害群0.9±1.0点、非聴覚障害群2.0±0.6点、t(50)=-2.26,p<0.05)、1年後の縦断的調査では、聴覚障害はMMSE総点に影響を及ぼすものではないこと(聴覚障害群(初期評価16.4±3.9点、再評価時14.6±4.3点)、非聴覚障害群(初期評価時17.0±2.8点、再評価時15.6±3.2点))、3)MMSEの教示文をすべて文字化することは、むしろ読解力低下を伴う認知症者にとって得点低下につながる可能性があること(MMSE総点16.6±6.4点,written MMSE-J総点14.0±7.7点t(25)=2.72, p<0.05)、が示された。これらの基礎的資料をもとに、MMSE for HLを作成した。本年度は高齢者20例へ実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年度は、(1)聴覚障害を持つ認知症者のための認知機能測定法(以下、MMSE for HL(仮称))開発に関する情報収集、(2)MMSE for HLの作成、(3)高齢者の評価、(4)認知症者の評価を予定していた。このうち、実施したのが(1)、(2)、(3)である。また、2012年度に予定していた聴覚障害が認知症者の知的機能に及ぼす影響については、(2)の開発のために必要な調査として、前倒しして実施した。(4)については、予測したよりも高齢者の中には聴覚障害を持つ者が少なく、MMSE for HLの有用性を確認し難い状況であった。そこで、認知症者への施行の前に、高齢でかつ聴覚障害を持つ者を対象とした調査の必要性を認識し、今年度予定していた認知症者への施行には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度残されている課題は、(1)聴覚障害を持つ高齢者への施行、(2)認知症者の評価、(3)信頼性・妥当性の評価、(4)聴覚障害重度例への施行、(5)研究成果報告、である。(1)については、既に高齢者の人材派遣会社を通じて募集を始めている。(2)は、当初予定していた人数よりも少ない人数での予備的な施行とする。理由は、研究協力を要請していた施設のうち1か所の協力が難しくなったこと、(1)を行う予定が当初なかったため、それに要する負担が大きいこと、による。(4)については、数例の聴覚障害重度例への施行を行う。(5)は、高次脳機能障害学会、認知神経科学会での学会発表、九州保健福祉大学紀要への論文投稿を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
高齢でかつ聴覚障害を持つ者へ調査を行うため、人材派遣料を要する。学会発表や打ち合わせに伴う旅費を要する。論文発表するにあたり、英文添削料を要する。最終報告書印刷のための、印刷用紙、カートリッジ代などの消耗品費を要する。
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Research Products
(4 results)