2011 Fiscal Year Research-status Report
「運動学習」を基盤とした脳卒中片麻痺後の歩行訓練プログラムの開発
Project/Area Number |
23700658
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
小川 哲也 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 流動研究員 (60586460)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 脳卒中 / 歩行 / リハビリテーション |
Research Abstract |
脳卒中罹患後の麻痺によって生じる歩行パターンの非対称性改善を目的としている。歩行パターンの生成は身体とそれを取り巻く外部環境の協調により実現するが、本研究計画では、左右非対称な物理的制約を課すことにより歩行パターンを一過性に変調させ、さらには、そのような環境下での繰り返しのトレーニングにより新規の(より対称な)運動パターンの定着を目指し、結果、脳卒中罹患後における歩行非対称性の改善のためのトレーニング方法を構築することを目的としている。これまでにも類似の例は報告されてきたが、その多くは、過度な物理的制約を課すことにより身体と外部環境の協調を乱していると想定されるものや、あるいは、歩行の時空間的調節(見かけ上の対称、非対称)のみに傾倒するあまり、機能的側面における評価に乏しいものが多い。そこで本研究では、歩行パターンの改善のための至適条件を探索するとともに、より機能的側面について評価すべく、下肢の筋活動や地面反力などを指標とした解析方法を採用している。計画の初年度である平成23年度は当初、様々な歩行速度や速度比(左右)などの至適条件探索を予定していたが、物理的制約下における歩行パターンの調節は、先行研究の報告を基に想定していた以上に個人間のばらつきが大きい、すなわち、ある制約下において取る戦略(時間、空間の調節、その基盤となる筋活動の調節)が個人によって大きく異なり、至適条件についても個人により大きく異なることが想定されるため、群としての一様な評価は困難であった。そこで、物理的制約下における歩行戦略について健常者、患者ともに網羅的な測定、解析を実施し、結果、歩行周期中におけるタイミングに依存した筋活動の調節や、方向に特異的な地面反力の調節が個人ごとに観察された。個人ごとの身体的特性や起こった調節の程度などの対応関係を基に今後の至適条件の探索に結び付けていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の開始当初においては、これまでに報告されてきた数々の先行研究の結果を受け、歩行パターンに非対称性のある脳卒中患者全般に対する至適な物理的制約条件を探索することを目標として位置づけていたが、実際の測定結果を受け、ある一定の物理的制約に対しても、そのなかで取りうる戦略(調節方法)は個人により非常に大きく異なり、したがって、適切な歩行パターンの変調をもたらす至適条件もまた、個人間で大きく異なるのではないかとの見解に至った。そこで、今後は視点を少し変え、これまでに得てきた結果における物理的条件と歩行パターンの変調の程度、個人の身体特性などの対応関係を精査し、各個人に特異的な条件の探索を実施することが本研究課題における目的の達成により有効であると考えている。当初の予定からは計画を変更せざるを得ない点はあるものの、全体的な目的達成のための基盤となる結果はすでに得つつある。
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Strategy for Future Research Activity |
一般的なリハビリテーショントレーニングの目的もそうであるように、本研究においても、歩行訓練装置上で獲得されると見込まれる新規の(より対称に近い)歩行パターンが、実際の社会生活場面で想定される地面上の歩行でいかに発揮できるのか検証することを最終的な目的としている。これまでに得られた結果を基に、各個人における至適な物理的制約条件について一定の見解を得るとともに、5から6名程度の患者を対象に、地上方向に対する獲得した歩行パターンの転移を評価するための測定を予定している。第1四半期から第2四半期にかけて測定を実施し、その後の期間において結果の解析および議論、さらに必要に応じた追加測定を実施したいと考えている。また、得られた結果については、適宜、所属機関内外の研究者と議論を交わすとともに、学会における発表や専門誌への掲載を通して広く一般に発表していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度に予定していた機器などを、今年度の初めに購入したため、本実績報告書の記入の時点において前年度分はほぼ予定通りに使用済みである。本年度は、申請時点における予定通り、実験の実施にともなって必要となる消耗品の購入や被験者に対する謝金、学会参加に際しての旅費、論文の執筆にともなって発生する校閲料や掲載料などに使用する予定である。
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