2011 Fiscal Year Research-status Report
背圧軽減による仰臥位姿勢における褥瘡予防の力学的検討
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23700663
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
大下 賢一 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60334471)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 仙骨部 / せん断力・圧迫力の測定 / 粘弾性挙動 / 有限要素法 |
Research Abstract |
褥瘡好発部位である仙骨部直下の皮膚表面のせん断力と圧迫力を測定するために,現有設備であるmolten社製PREDIAと新規購入したデータロガー(キーエンス社製TR-V500ほか),パーソナルコンピュータからなるデータ収集システムを確立した.このとき得られる測定値の精度を確認するため,交付申請書に記載した「研究実施計画」のH24年度(4)で記載したひずみゲージ式計測システム(キーエンス社製NR-ST04ほか)をH23年度に購入し,剛体板上に重錘を置いた状態でベッドをギャッジアップ/ダウンした場合における重錘下面に生じる圧迫力およびせん断力を測定した.そして,両測定結果を比較することにより,弾塑性ひずみ条件下において上記データ収集システムの信頼性を確認した.両者の比較は重錘を用いた結果に対してのみしか実施していないが,同様の結果は粘弾性挙動にも有効であると考えられることから,これによりベッドのギャッジアップ/ダウン時における圧迫力のみならず,せん断力の挙動も得ることが可能となった.一方で,有限要素法による非弾性解析を実施するためのコンピュータとプリ/ポストプロセッサHyperWorksを購入し,仙骨部近傍のモデル化を試みた.その結果,皮下組織等の生体材料をMaxwellの粘弾性体と仮定することにより,ギャッジアップ/ダウンに伴う仙骨部近傍の身体内部の応力分布を表現することができた.交付申請書に記載した「非弾性構成式の再構築」までには至っていないが,仙骨部のような応力集中部を有するモデルに対して非線形解析を行う際は実行エラーを起こすことがよくあるため,シミュレーションが得られるようになっただけでも本研究全体を遂行する上で意義深い.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究実施計画」ではH23年度に本研究室の学生を中心に20名程度に被験者として協力していただき,ギャッジアップ/ダウン時において褥瘡好発部位に生じる圧迫力およびせん断力を測定するとしていた.しかし,上記したようにI.はじめにデータ収集システムを確立し,そのデータの信頼性を確認する必要があったため,データ取得の取り掛かりに時間を要したことII.H24年度もマットレスを替えて同様の実験を行う必要があるため,卒業・修了などにより被験者の確保が困難になることを考慮して当初の実験計画を変更し,実験結果の取得をH24年度のみで行うことにした.そこで,H23年度は実験精度の確認作業および有限要素解析を主に行った.先述したように仙骨部近傍のみを取り出した局所モデルに対して皮下組織等の生体材料をMaxwellの粘弾性体と仮定した粘弾性解析実行できたことは本研究を遂行する上で非常に大きな成果である.本研究のような複雑な局所モデルの粘弾性解析においては,実行エラーを起こすことなく解析結果を得る状態にモデル化することでさえ,非常に時間がかかることが多い.このため,交付申請書に記載した「研究実施計画」ではこの作業をH23~24年度の2年間にわたる継続課題としていた.しかしながら,現時点においてエラーを起こすことなくシミュレーションをすることが可能となったので,H24年度は若干の構成式の変更のみとなった.また,実験精度の確認作業もすでに一部終えているので,交付申請書に記載した「研究実施計画」H24年度(4)の作業も非常に簡単となった.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,臥床時において20名程度の被験者を対象にベッドのギャッジアップ/ダウン角度の変化に伴う褥瘡好発部位である仙骨部における圧迫力およびせん断力の変化を測定する.被験者として本研究室の学生を中心に協力していただく.これらの結果がマットレスの特性に依存しないことを確認するために現有設備であるマットレスに加えて,新たにマットレスを購入する.また,比較のためにマットレス上だけでなく,剛体板(ステンレス板)をマットレスと想定して同様の実験を行い,物理モデルの予測を行う.なお,ひずみ測定用センサインターフェイスは交付申請書に記載した「研究実施計画」ではH24年度に購入予定であったが,上記したとおり,H23年度に購入している.また,この時得られた実験結果と有限要素法による解析結果を比較することにより,H23年度でシミュレーションに用いた非弾性構成モデルの再検討を行う.本研究ではモデルを仙骨部の一部を取り出した局所モデルとし,まずは骨・皮下組織・皮膚・マットレスの4層モデルとする.構成モデルが決定次第,マットレスの特性値,ギャッジアップ角度などのパラメータに加えて仙骨部の形状を種々に変化させてシミュレーションを実施し,これらの変化に伴う仙骨部近傍の応力分布変化の様子を確認する.このようにFEMを用いたシミュレーション結果により局所応力が小さくなる姿勢・状態等を検討することで褥瘡好発部位における力学的負担の軽減策など,力学的な視点から見た褥瘡発生・予防に関する総合的な考察を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度未使用額として152,475円が生じた.これは上記したように当初の実験計画を変更して実験データ取得の一部をH24年度に実施することとしたため,交付申請書に記載した「研究実施計画」で購入予定であったマットレス等の医療用品・研究補助(謝金)を支出していないことが大きい.これを踏まえH24年度は,まず,マットレスなどの医療用品を購入必要がある.さらに,今年度は鋼板を用いて仙骨部近傍直下の応力分布を測定するため,ベッドと同サイズの鋼板(H23年度は重錘を置いた状態での圧迫力およびせん断力の測定のみだったため,鋼板は薄板でしかもベッドに一部にしか設置していなかった),取付金具などそのほか一式が必要となる.さらに,H23年度は被験者の協力による実験データの取得には至っていないため,今年度は非常に多くの被験者にお手伝いを頂く必要があることから,研究補助等の謝金が必要となる可能性がある.また,H23年度も購入したプリ/ポストプロセッサHyperWorksも単年度のライセンス更新契約となっているため,今年度も契約の更新が必要となる.なお,交付申請書に記載した「研究実施計画」においてH24年度に購入予定だった「ひずみ測定用センサインターフェイス」はH23年度に購入済みである.
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