2011 Fiscal Year Research-status Report
難病患者生活の質向上のための眼電位を用いたマウスカーソル制御システムの開発
Project/Area Number |
23700668
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
田村 宏樹 宮崎大学, 工学部, 准教授 (90334713)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | ヒューマンインターフェイス / 生体信号処理 / ソフトコンピューティング |
Research Abstract |
現在、日本には2万1千人を超える筋委縮性側策硬化症(ALS)患者がいる。ALS症は自律神経や知覚神経は侵されないので、患者の意思は病状末期でも明確である。しかし、ALS症は、体を動かすための神経系が侵されるため言語、非言語コミュニケーションが非常に困難である。そこで病状末期においても比較的最後まで随意運動が残る眼球運動を応用したコミュニケーションツールの開発が求められている。 本研究は、ALS患者や四肢麻痺患者を対象とし、眼電位を用いた自由度の高いパーソナルコンピュータのマウスカーソル制御装置の開発を行う。申請者の調査した範囲では、マウスを用いたマウスカーソル制御と同じレベルでの眼電位を用いたマウスカーソル制御システムは存在しない。開発したマウスカーソル制御装置でブラウザや市販されている文章作成ソフトをスムーズに、かつなるべくストレスなく制御できるようになることを本申請研究の最終目的としている。 本年度は、眼電位計測装置の製作、信号解析アルゴリズムの開発、マウスカーソル制御ソフトウェアのアルゴリズム開発を行った。眼電位計測装置は、フィルタとアンプと電子パーツで回路を作り、基板加工機を用いて製作した。また、眼電位の問題点である基準電位が時間とともに少しずつ変化するドリフト現象に対し、その変化に時間とともに対応する信号解析アルゴリズムを実装した。これにより、長時間、連続的に信号解析が可能になった。製作した眼電位計測装置と信号解析アルゴリズムを用いてマウスカーソル制御ソフトウェアを開発し、眼電位を用いたマウスカーソル制御システムを実現した。製作したシステムを用いて、眼電位でマウスカーソルを動かし、文章を作成することに成功している。本研究で製作したシステムは、ALS患者や四肢麻痺患者などの難病患者のためのコミュニケーションツールになるものと期待している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、眼電位計測装置の製作、信号解析アルゴリズムの開発、マウスカーソル制御ソフトウェアのアルゴリズム開発を行い、眼電位を用いたマウスカーソル制御システムを開発した。さらに、カメラを用いて、利用者の顔の大まかな向きを画像処理により推定し、モニタの方を向いていないと判断した時の眼電位の変化は制御に用いないようにするアルゴリズムの導入も既にできている。 開発したシステムを用いて、眼電位でマウスカーソルを動かし、文章を作成する評価実験を行ったところ、1文字のアルファベットを入力するのに、個人差はあるが約4.5秒から6.5秒程度で入力できることがわかった。また、開発したシステムに慣れるまでに3日間程度の訓練が必要であることもわかってきた。 このように当初の計画通り、眼電位でマウスカーソル制御を実現し、文章作成に成功していることと、評価実験の結果より、実用化のための見通しが立ったことから、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、作製した装着装置とマウスカーソル制御ソフトウェアを実験を通して改善していくことが挙げられる。また、検証実験を行い、実用化に向けたシステムの性能評価を実施する。検証実験としては以下の3つの実験を計画している。・開発したシステムで文章入力、ブラウザ操作の実験を行い、そのときの間違い率、作成時間、被験者にかかるストレスを計測して定量的に評価を行う。そのときのストレスを計測する方法としてストレスチェックCoCoRoMeterを用いてストレスレベルをチェックする。また、眼球動作と眼電位の変化にどの程度差があるかはビデオカメラを用いて検証する。・システムを繰り返し使用することで操作性が向上するのかどうかを定量的に評価する実験を数日間行う。その実験より、間違い率、作成時間、被験者にかかるストレスがどのように変化するのかを検証する。本実験には被験者の個人差が大きいことが考えられるため、多くの被験者に実験の協力をしてもらう計画である。・ディスプレイの位置、大きさと操作性の関係を定量的に評価する検証実験を行う。本システムは、被験者と操作画面であるディスプレイの位置、大きさにその操作性が大きく依存すると予想される。ディスプレイの位置、大きさをコントロールして変えた場合の操作性能を間違い率、作成時間、ストレスをもとに検証する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、消耗品として、限電位計測装置を改善するための電子パーツと検証実験に必要な電極類、研究成果を学会で発表するための旅費とその論文投稿料、検証実験を円滑に行うために必要な被験者の研究補助費として使用する計画である。
|
Research Products
(2 results)