2012 Fiscal Year Research-status Report
難病患者生活の質向上のための眼電位を用いたマウスカーソル制御システムの開発
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23700668
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
田村 宏樹 宮崎大学, 工学部, 准教授 (90334713)
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Keywords | ヒューマンインターフェイス / 生体信号処理 / ソフトコンピューティング |
Research Abstract |
現在、日本には2万1千人を超える筋委縮性側策硬化症(ALS)患者がいる。ALS症は自律神経や知覚神経は侵されないので、患者の意思は病状末期でも明確である。しかし、ALS症は、体を動かすための神経系が侵されるため言語、非言語コミュニケーションが非常に困難である。そこで病状末期においても比較的最後まで随意運動が残る眼球運動を応用したコミュニケーションツールの開発が求められている。 本研究は、ALS患者や四肢麻痺患者を対象とし、眼電位を用いた自由度の高いパーソナルコンピュータのマウスカーソル制御装置の開発を行う。申請者の調査した範囲では、マウスを用いたマウスカーソル制御と同じレベルでの眼電位を用いたマウスカーソル制御システムは存在しない。開発したマウスカーソル制御装置でブラウザや市販されている文章作成ソフトをスムーズに、かつなるべくストレスなく制御できるようになることを本申請研究の最終目的としている。 本年度は、新たな眼電位計測装置の製作、マウスカーソル制御の脳波での判定アルゴリズムの開発及びカメラと眼電位計測装置を組合せたシステム開発を行った。眼電位計測装置は、昨年度製作した装置を拡張し、無線で信号を送信でき、かつ小型化を行った。また、眼電位信号による制御が正しいかどうかを判定するため、脳波を用いて、眼電位の判定を行う実験を行い、有効な情報を得ることができた。さらに、ユーザーが特定の方向を向いているときにだけマウスカーソル制御を行うことで、少しでもストレスを生じさせないように、カメラでの顔の向き判定と組み合わせたシステムの開発を行い、その評価実験を行っている。 本研究で製作したシステムは、ALS患者や四肢麻痺患者などの難病患者のためのコミュニケーションツールになるものと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、新たな眼電位計測装置の製作、マウスカーソル制御の脳波での判定アルゴリズムの開発及びカメラと眼電位計測装置を組合せたシステム開発を行った。昨年度までで眼電位計測によるマウスカーソル制御システムは完成しており、本年度はさらにユーザの利便性を向上させるための改善を行った。その1つが、脳波での判定アルゴリズムの導入である。脳性まひなどの患者は、実際にマウスカーソルの制御が正しかったかどうかの判定を他人に伝えることができない。そこで、眼電位計測と同時に脳波を計測し、その制御がうまくいっているのかどうかを判定するアルゴリズムを導入し、その評価実験を行った。その結果、87%の精度で判定できることが分かった。そのことより、マウスカーソルの制御が正しい制御であるかどうかが分かり、正しいコミュニケーションが取れるようになると期待している。 もう1つは、カメラによる顔の向きを判定するシステムと組み合わせるシステムを開発したことである。ユーザは眼電位計測中は常にマウスカーソル制御状態になるので、操作中は常に緊張している状態になる。そこで、顔の向きを少し対象モニターから外すことで、操作をOFF状態にし、緊張をほぐしたり、休むことができるようになると考えて、本システムを構築した。本システムでの実験により、ユーザは緊張することなく、比較的短時間(3日計6時間の訓練)で本システムの操作に慣れることを検証実験より判明した。 このように当初の計画通り、眼電位でマウスカーソル制御を実現し、よりユーザの利便性を向上させるためのシステムの導入と評価実験を行うことができた。これらのことより、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、1)実際の障がい者でのモニタリングテストを実施すること、2)眼電位によるマウスカーソル制御でストレスを生じにくくするためのソフトウェア上での工夫、3)マウスカーソル制御以外のタブレット端末制御などへの応用を行う計画である。 当然ながら、上記の研究を行いつつ、機器の改善、眼電位計測・判定アルゴリズムの改善、様々な評価実験(慣れ、ストレス評価、対象画面の変更による影響)を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は、限電位計測用の消耗品としての電極類、実験で必要なモニターや端末機器などの備品、研究成果を学会で発表するための旅費とその論文投稿料、検証実験を円滑に行うために必要な被験者の研究補助費として使用する計画である。
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Research Products
(5 results)